最新の研究成果

高い立体選択性を持つ人工金属酵素の簡便な創製に成功!~天然酵素のメカニズム解明に期待~

2023年3月15日

  • プレスリリース
  • 農学研究科

ポイント

◇天然の非ヘム金属酵素1にみられる共通金属結合モチーフ2-His-1-carboxylate2を持つ人工金属酵素を簡便に創製することに成功。
◇天然酵素にも見られる金属イオンの位置遷移が、本研究で創製した人工金属酵素でも観測。
◇本研究で創製した人工金属酵素の反応機構を詳細に解析することで、天然酵素の反応メカニズム解明に繋がることが期待。

概要

大阪公立大学大学院 農学研究科 藤枝 伸宇教授らの研究グループは、天然の非ヘム金属酵素にみられる共通金属結合モチーフ2-His-1-carboxylateを持つ人工金属酵素を簡便に創製することに成功しました。
近年、酵素を用いた物質生産は環境にやさしい技術として注目されています。しかし、化学工業に展開可能な反応を触媒する天然酵素は少なく、人工的に酵素を創製することが求められています。
本研究により、高い立体選択性3を持つ人工金属酵素を簡便に創製できることが明らかとなりました。また、この人工金属酵素では天然酵素に見られる金属イオンの位置遷移が観測されたことから、未解明な部分が多い天然酵素の反応メカニズム解明の一助となることが期待されます。
本研究成果は、2023年3月13日に、国際学術誌「Chemical Science」のオンライン速報版に掲載されました。

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新規人工金属酵素の結晶構造と推定反応機構

農学研究科 生命機能化学専攻 教授 藤枝 伸宇(ふじえだ のぶたか)
研究分野:タンパク質酵素有効活用・人工酵素設計法・生物無機化学

反応部位が柔軟な非ヘム金属酵素を作り出すことに成功しました。金属酵素の分子設計は難易度が高く、計算科学が発達した今も自在に行うことはできません。本研究を発展させることで、温和な条件下で活躍するさまざまなバイオ触媒が生み出されていくことを期待しています。

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掲載誌情報

【発表雑誌】Chemical Science (IF=9.969)

【論 文 名】An artificial metallolyase with pliable 2-his-1-carboxylate facial triad for stereoselective Michael addition

【著  者】Ryusei Matsumoto, Saho Yoshioka, Miho Yuasa, Yoshitsugu Morita,Genji Kurisu and Nobutaka Fujieda

【掲載URL】https://doi.org/10.1039/D2SC06809E

プレスリリース全文 (491.7KB)

用語解説

※1 非ヘム金属酵素:遷移金属イオンが直接アミノ酸残基に配位した活性中心をもつ酵素のこと。ヘモグロビンなどに含まれるヘム鉄とは異なることから非ヘムと名付けられた。
※2 2-His-1-carboxylate:2つのヒスチジンとカルボン酸(グルタミン酸とアスパラギン酸)からなるもので、特にfacial配位構造をとるものは配位アミノ酸が逆側に広い基質結合サイトをもたらし、酵素活性の促進をすると考えられています。
※3 立体選択性:分子内での化学反応において、反応に参加する分子の立体構造によって反応速度や反応生成物が変化すること。高い立体選択性は、酵素の立体構造が非常に複雑であることによって実現されます。

研究内容に関する問い合わせ先

農学研究科
教授 藤枝 伸宇(ふじえだ のぶたか)
TEL:072-254-9457
E-mail:fujieda[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

広報課 担当:久保
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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