最新の研究成果
機能性が最大化する食品加工法の確立と食品ロス削減を目指す ~寄附講座『ACESYSTEM Laboratory of Food Process Initiative』を開設~
2023年5月8日
- プレスリリース
- 研究推進機構
- 産学官連携
大阪公立大学は2023年5月1日より、寄附講座『ACESYSTEM Laboratory of Food Process Initiative』(寄附者:エースシステム株式会社、英名ACESYSTEM CO., LTD. 本社:大阪府和泉市)を開設しました。本寄附講座では、食品の最適加工法を研究し、野菜の栄養成分を損なわず長期間保存を可能にすることで食品ロスの削減を目指します。また、食品成分の膨大な分析データを解析することで、マシンラーニング(機械学習)を活用した食品のおいしさや機能性を最大化するシステムの構築に取り組みます。
本寄附講座の特徴
◇過熱水蒸気加工をはじめとするさまざまな食品加工技術を用いた、食品のおいしさや機能性および保存性を最大化する加工法の検証。
◇野菜などに含まれる成分が食品加工によりどのように変化しているかを分析するとともに、特徴的な変化があった成分と加工法にはどのような関係性があるかを分析。
◇フードミクス※(食品中成分の網羅的解析)を活用し、LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析装置)やGC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析装置)といった分析装置から得られる大量のデータを一連のワークフローにより自動解析し、有用な情報を取得。
◇マシンラーニングを、フードミクスによって得られる解析データから、私たちの感覚表現(香りの官能評価など)を解析するために活用。
※フードミクス
味や栄養といった食の基本的な情報や食が生体に与える生理機能情報など「食に関する科学的情報」を網羅的に解析する学問分野
代表研究者(中田 靖 特任教授)からのコメント
これまでさまざまな角度から食品加工や栄養成分についての研究が行われていますが、食品の成分と調理・加工による化学反応はあまりにも複雑で、おいしさ(風味など)や機能性の変化を含めた総合的な視野に立った研究は、あまり進んでいないのが現状です。マシンラーニングは画像や記述的なデータを分析するのに役立つことが知られていますが、同様に、良い香り、おいしいといった私たちの感覚表現と科学的なデータを橋渡しする非常に有効な手段です。
「食」は、単に栄養を満たす対象としてだけでなく、食文化と社会環境との関わりや、心身への影響を与える研究対象としてきわめて重要です。我々のグループでは、食品工学と分析化学に加え人間科学的な視点も取り入れて、内外の研究機関と連携し、食事を通じて自然に体調を維持・調整できる健康長寿社会の実現を目指し、SDGsの達成にも貢献します。
開設の背景
北村 進一特任教授らの研究グループはこれまで、加工技術として過熱水蒸気調理、超臨界二酸化炭素抽出、湿式微粒化処理による分解・分散に焦点を当てて研究を進めてきました。
本寄附講座への寄附者であるエースシステム株式会社は、2011年より北村 進一特任教授らの研究グループと過熱水蒸気を用いた効率的な食品加工(特に炊飯)について共同研究を行い、2019年には「業務用過熱水蒸気調理機」で機械振興協会会長賞を共同受賞しました。本調理機は過熱水蒸気による加熱だけでなく、100℃よりも低い温度帯での安定した蒸気加工が可能であり、食品の風味や色、栄養成分を損ないにくく、さらにコンベア方式による連続大量調理を実現しました。
バッチ式過熱水蒸気調理機による試験の様子
蒸気加工した野菜類
概要
(1)設置場所:大阪公立大学 研究推進機構 生物資源開発センター (中百舌鳥キャンパス)
(2)講座名称:ACESYSTEM Laboratory of Food Process Initiative
(3)担当教員:中田 靖 特任教授、北村 進一 特任教授、竹満 初穂 特任准教授
(4)設置期間:2023年5月1日 ~ 2026年4月30日
関連情報
・大阪公立大学 研究推進機構 ACESYSTEM Laboratory of Food Process Initiative Webサイト
・第53回機械振興賞「機械振興協会会長賞」を受賞(大阪府立大学 Webページ)
・エースシステム株式会社 Webサイト
・エースシステムソリューション株式会社 Webサイト
本講座に関する問い合わせ先
担当:研究推進課 津田
TEL:072-254-8327
E-mail:ytsuda[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
担当:広報課 上野
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs