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世界初! 量子渦と常流体の相互作用を解明 -量子渦の運動に関する大きな問題に終止符-

2023年5月26日

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  • 理学研究科

本研究のポイント

「粘性を持たない超流体の渦」と「粘性を持つ常流体」がお互いに及ぼす影響を同時に計算することに成功
◇可視化実験により超流体の量子渦輪が収縮する様子を観測することに成功
◇実験結果に基づき、複数の理論モデルから最も整合性のとれたモデルを決定
◇今後多くの超流動現象の解析に貢献

概要

大阪公立大学の坪田 誠教授、湯井 悟志特任助教(大学院理学研究科および南部陽一郎物理学研究所所属)、慶應義塾大学の小林 宏充教授(法学部日吉物理学教室および自然科学研究教育センター所属)らの研究グループは、極低温で超流動状態となった液体ヘリウム4における量子渦(粘性を持たない超流体の渦)と常流体(粘性を持つ流体)との間で及ぼし合う影響について数値計算によって調査し、フロリダ州立大学のWei Guo(Professor)、Yuan Tang(Postdoctoral Associate)、Toshiaki Kanai(Graduate Student)らが行った実験結果に基づき、複数の理論モデルから最も整合性のとれたモデルを決定しました。

本研究成果は、「どのモデルが実験結果と整合するのか」という今まで多くの量子流体力学研究者を悩ませてきた問いに終止符を打つものです。今後、多くの超流動現象の数値計算や解析に新しい指針を与え、同研究分野の発展が期待されます。


本研究の主題である量子渦と常流体の相互作用は、私がこの分野の研究を始めた頃から大きな謎でした。しかし、計算機の発達によりこの問題を扱えるようになったことと、今回のフロリダ州立大学の研究者による見事な可視化実験がブレイクスルーを生むこととなりました。ある時点で解けない謎が、その後の技術の発展により解明できるようになることは科学ではよくありますが、本研究はその好例です。

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坪田 誠 教授



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左図:可視化された量子渦輪。 中・右図:計算結果により得られたイメージ図。緑線が量子渦輪、赤のチューブが常流体渦輪、常流体速度(赤が高速)の平面内分布と流線分布。渦輪は右上方向へ進行。中図のモデルでは、常流体渦は量子渦輪の前後にできるが、右図のモデルでは、常流体渦が量子渦輪の内外にできる。実験との比較の結果、右図のモデルに決定された。

用語解説

※ 量子渦:超流動中に出現する、渦芯周りの速度循環が量子化された(決まった値しかとれない)渦。

資金情報

本研究は、科研費JP22H01403の対象研究です。

掲載紙情報

発表雑誌: Nature Communications
論 文 名:

Imaging quantized vortex rings in superfluid helium to evaluate quantum dissipation

著     者: Yuan Tang, Wei Guo, Hiromichi Kobayashi, Satoshi Yui, Makoto Tsubota and Toshiaki Kanai
掲載URL: https://doi.org/10.1038/s41467-023-38787-w



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研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
教授:坪田 誠(つぼた まこと)
TEL:06-6605-3073
E-mail:tsubota[at]omu.ac.jp     [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

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