最新の研究成果
食中毒から子どもを守るために 食中毒原因菌 Providencia属細菌の特性を明らかに-感染経路の特定や予防法の確立へ大きな一歩-
2023年6月6日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇O-157やサルモネラ菌と同様の食中毒原因菌として注目されているProvidencia属細菌※1。
◇一部のProvidencia属細菌での病原遺伝子の伝播方法を解明。
◇感染経路の特定や予防法の確立に向けて新たな知見を提供。
概要
近年、胃腸炎などの患者から検出されるようになったProvidencia属細菌は、O-157やサルモネラ菌などと同様に食中毒の原因菌として注目されています。免疫力の低い子どもにとって、食中毒は下痢や脱水など重篤な症状を引き起こす可能性があるため、感染源や病原因子の解明と予防法の確立は、日本のみならず世界中の喫緊の課題となっています。
大阪公立大学大学院 獣医学研究科の山﨑 伸二教授、Sharda Prasad Awasthi特任講師、Jayedul Hassan大学院生らの研究グループは、水島中央病院、Independent University Bangladeshとの共同研究により、Providencia属細菌の一種であるProvidencia rustigianiiやProvidencia alcalifaciensが持つ病原遺伝子が、細菌細胞内でどのように伝播するのかを明らかにしました。本成果は、Providencia属細菌の感染経路の特定や食中毒の予防法確立に向けて新たな知見を与えると考えられます。
本研究成果は、米国微生物学会が刊行する国際学術誌「Infection and Immunity」のオンライン速報版に、2023年5月9日に掲載されました。
本研究は、バングラデシュからの留学生のJayedul Hassanさんとインド人特任講師の Sharda Prasad Awasthiさんが中心となって行った研究です。Providencia属菌は新興人獣共通感染症として今後さらに問題となる可能性のある細菌です。現在は、厚生労働省科学研究費でProvidencia属菌の食肉の汚染状況について調べており、得られる成果は本菌の感染源解明や食中毒対策に役立つ可能性があります。
山﨑 伸二教授
資金情報
本研究の一部は、日本学術振興会(JSPS)科研費(17H04651、20K07483)からの支援を受けて行われました。
用語解説
※1 Providencia属細菌…大腸菌やサルモネラなどと同じく細菌の分類学上、腸内細菌科に属する細菌。
掲載誌情報
【発表雑誌】Infection and Immunity
【論文名】Presence of functionally active cytolethal distending toxin genes on a conjugative plasmid in a clinical isolate of Providencia rustigianii
【著者】Jayedul Hassan, Sharda Prasad Awasthi, Noritoshi Hatanaka, Phuong Hoai Hoang, Akira Nagita, Atsushi Hinenoya, Shah M Faruque and Shinji Yamasaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1128/iai.00121-22
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 獣医学研究科
教授 山﨑 伸二(やまさき しんじ)
TEL:072-463-5653
E-mail:yshinji[at]omu.ac.jp
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
該当するSDGs