最新の研究成果

ツクツクボウシの鳴き声がパートごとに異なる意味を持つことを初実証

2023年6月28日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇ツクツクボウシの鳴き声のパターンが途中で変化するという現象は、世界的に見ても極めて珍しいが、途中で変化する鳴き声の行動生態学的意義については不明であった。
◇ツクツクボウシのオスに「オーシンツクツク」パートと「ツクリヨーシ」パートを単独で聞かせた時、それぞれのパートに対する応答の頻度が異なることを見出し、これらのパートがオスの異なる反応を誘発することを初めて明らかにした。
◇今後はツクツクボウシにおける音声コミュニケーションの実態解明に向け、鳴き声に対するメスの応答や交尾の成功率なども調べていく必要がある。

概要


セミはオスのみが鳴き声を発する動物であり、その鳴き声をオス同士の競争やメスに対するアピールに用いていると考えられています。この中でもツクツクボウシというセミは、その鳴き声のパターンが「オーシンツクツク」から「ツクリヨーシ」へと途中で変化するという、極めて珍しい特性を持っています。一方で、鳴き声を途中で変化させることの生物学的意義は、これまで明らかになっていませんでした。

本研究は、ツクツクボウシのオスが「オーシンツクツク」パートと「ツクリヨーシ」パートに対して、それぞれ異なる頻度で応答することを明らかにしました。

press_0306_fujii01

ツクツクボウシのオス  撮影: 児玉建

九州大学大学院システム生命科学府 博士学生の児玉建氏、大阪公立大学大学院理学研究科 客員研究員の粕谷英一博士および九州大学大学院理学研究院生物科学部門の立田晴記教授らの研究グループは、ツクツクボウシの鳴き声の「オーシンツクツク」パートと「ツクリヨーシ」パートそれぞれをスピーカーで再生し、捕獲したツクツクボウシのオスに聞かせる実験を行いました。ツクツクボウシでは、オスが鳴いている際に近くにいる別のオスが「ギーッ」という“合の手”を入れることが知られています。こうした行動に着目し、異なる音声データを再生して合の手の頻度を比較したところ、「オーシンツクツク」パートを含む音声により多く合の手を入れて応答しました。

今回の発見は、ツクツクボウシの鳴き声が途中でパターンを変えることで、他のオスの行動を変化させることを初めて明らかにしました。今後はオスの変化する鳴き声が繁殖上どのような意義を持つのかを調べることで、ツクツクボウシの音声コミュニケーションの実態解明を進めて行きます。

本研究の成果は、Wiley-Blackwell社の雑誌「Entomological Science」に2023年5月29日(月)(日本時間)にオンライン掲載されました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Entomological Science
【論 文 名】Difference in the responses of male cicada Meimuna opalifera to the two parts of conspecific calling song
【著  者】akeru Kodama, Eiiti Kasuya, Haruki Tatsuta
【掲載URL】https://doi.org/10.1111/ens.12550

プレスリリース全文 (1.3MB)

謝辞

本研究はJST次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2136)、および九州大学 数理・データサイエンスに関する教育・研究支援プログラムの助成を受けたものです。

問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp  ※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs04