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植物の種間交雑育種を妨げる重要課題! 「雑種致死」に関する総説論文を発表

2023年7月5日

  • 農学研究科
  • 研究

農学研究科の手塚 孝弘講師は、何 海博士(現:中山大学博士研究員、2020年3月 大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士後期課程修了)および白柿 薫平博士(現:東京大学博士研究員、2021年3月 大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士後期課程修了)と共同で、「雑種致死」に関する総説論文を発表しました。

本研究グループでは、タバコの栽培種と野生種をはじめとしたさまざまな植物種を用いて、雑種致死の解析を行っています。雑種致死は種を隔てる生殖隔離の一種であり、交雑によって得られた雑種に致死性が生じる現象です。この現象が生じると雑種の子孫を得ることができないため、種間交雑による植物育種(品種改良)の障害となっています。雑種致死は交雑によって得られた雑種種子の雑種胚および雑種実生(雑種植物)で生じることが分かっています。これは植物の異なる生育や発達のステージで雑種致死が生じるということを意味します。

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タバコの種子

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タバコの実生


これまでに雑種致死に関して多くの研究が行われ、豊富な知見が蓄積されていますが、雑種胚および雑種実生における雑種致死が同じ機構によって生じるのか、あるいは異なる機構によって生じるのかについて言及した論文は見当たりませんでした。本総説論文では雑種胚と雑種実生、それぞれの雑種致死の研究や知見を体系立てて紹介し、その共通性や相違性を検証しました。さらに、種間交雑育種に向けて雑種致死を回避・克服するための方法や、逆に雑種致死を積極的に利用することで遺伝子汚染につながる遺伝子流動を防止するための技術について考察しています。

本総説論文は2023年7月5日に、国際学術誌「Frontiers in Plant Science」に掲載されました。

植物の雑種致死は種子と実生という異なる発達・生育のステージでみられる現象ですが、そのどちらも対象としている研究者はなかなかいません。ちょうど私が両方の研究をしていることから本総説論文を執筆することにしました。共著者の2人は私のもとで雑種致死の研究をし、博士の学位を取得されました。何さんは種子の方を、白柿さんは実生の方を主な研究対象としていましたが、それぞれの経験や知識を結集させて良い総説論文にまとめることができたと思います。

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手塚 孝弘講師



参考:大阪公立大学 遺伝育種学研究グループWebサイト
https://www.omu.ac.jp/agri/breeding-genetics/ 

資金情報

本研究の一部はJSPS科研費(20K05988)の助成を受けて実施しました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Frontiers in Plant Science
【論 文 名】Understanding and overcoming hybrid lethality in seed and seedling stages as barriers to hybridization and gene flow
【著  者】Hai He, Kumpei Shiragaki, Takahiro Tezuka
【DOI】10.3389/fpls.2023.1219417
【掲載URL】https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2023.1219417/full

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 農学研究科
講師 手塚 孝弘(てづか たかひろ)
TEL072-254-8457
E-mailtezuka [at]omu.ac.jp  ※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp  ※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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