最新の研究成果
-受精卵移植の受胎率向上を目指して- 黒毛和種牛卵子の成熟速度をAIで予測!
2023年8月10日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇黒毛和種牛の受精卵移植による受胎率は40~50%程度であり、受胎率向上が課題。
◇黒毛和種牛卵子における核成熟速度(NMS)のAI予測モデルを開発。
◇核成熟速度の卵子差に応じた体外受精法の開発に期待。
概要
ウシの繁殖管理の主な方法として受精卵移植が用いられています。しかし、体外受精卵による受胎率は40~50%程度であり、この改善は世界的な課題となっています。
大阪公立大学大学院 獣医学研究科のHo, Chia-Tang大学院生(大阪府立大学大学院 博士課程3年)、川手 憲俊教授、古山 敬祐准教授らの研究グループは、黒毛和種牛卵子の成熟過程を撮影し、そのデータをAI(人工知能)に学習させることで、卵子ごとに差のある核成熟速度の予測モデルを開発しました。この予測モデルを活用することで、卵子それぞれに適したタイミングで体外受精が可能な培養方法の開発が期待されます。今後は、本モデルの精度向上とともに、異なる品種のウシ卵子への応用等を進めます。
本研究成果は、2023年7月8日に国際学術誌「Theriogenology」にオンライン掲載されました。
図 AIにより核成熟速度(NMS)が速いと予測された卵子(左)と遅いと予測された卵子(右)の成熟培養前後の顕微鏡写真
(予測通り、実際のNMSも左の卵子は速く、右の卵子は遅かった)
人間の成長と同じように、卵子の成熟に必要な時間は卵子ごとに異なります。本研究では、その成熟速度を推定するモデルを作りました。昼夜問わずにデータ収集を行う必要があり大変でしたが、満足のいくモデルを作ることができ、嬉しく思っています。培養した全ての卵子を正常に発生させるという究極のゴールを目指して、これからも研究に励みます。
HO, Chia-Tang大学院生
掲載誌情報
【発表雑誌】Theriogenology
【論文名】Predicting nuclear maturation speed of oocytes from Japanese Black beef heifers through non-invasive observations during IVM: an attempt using machine learning algorithms
【著者】Thomas Chia-Tang HO, Noritoshi KAWATE, Keisuke KOYAMA*
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.theriogenology.2023.07.007
資金情報
本研究は、科研費若手研究(20K15681)の支援の下で実施されました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 獣医学研究科
准教授 古山 敬祐(こやま けいすけ)
TEL:072-463-5354
E-mail:koyama-keisuke[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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