最新の研究成果

個人差があるワクチン接種後の抗体レパートリー 変異株への防御能力がタイプ別で異なることが判明!

2023年10月12日

  • プレスリリース
  • 獣医学研究科
  • 医学研究科

ポイント

◇新型コロナワクチン接種後の産生抗体レパートリーは、3タイプに分類される。
◇変異株への防御能力にはタイプ別で差があることが判明。 

概要

新型コロナワクチン接種により産生される抗体は、感染予防の重要な役割を担います。抗体1つ1つを調べ、ウイルスに対してどの程度有用であるかの研究は進んでいますが、産生される抗体のレパートリーの個人差がワクチン接種後の変異株への防御能力に与える影響は明らかになっていません。

大阪公立大学大学院 獣医学研究科の安木 真世准教授らと医学研究科の城戸 康年教授ら、大阪国際感染症研究センターの共同グループは、抗体産生がピークとなる新型コロナワクチン接種後17日~28日の血液を採取し、産生された抗体のレパートリーを一人ずつ調べました。その結果、抗体がワクチン抗原である新型コロナウイルススパイクタンパク質のどの部分を標的とするかにより、主に3つのタイプに分類されることが判明しました(図1)。

さらに、N末端領域(NTD)1を主な標的とするタイプでは受容体結合領域(RBD)2を主な標的とするタイプに比べてデルタ株への防御能力が低いこと、感染増強抗体3の有無は、変異株への防御能力に影響がないことを、細胞への感染実験で明らかにしました。

本研究成果は、2023年9月4日に国際学術誌「Vaccine」のオンライン速報版に掲載されました。

press_1012_1図1 3つの抗体レパートリーとWuhan株と比較した際の変異株への防御能力の相関

単離された抗体1つ1つ(モノクローナル)の性状に関しては世界的に多くの知見が得られていますが、個人の血清レベル(ポリクローナル)で変異株への反応性を評価した研究は世界でも例がありません。今後のワクチンデザインに対する重要な基盤知見になり得る成果だと考えています。

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安木 真世准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Vaccine
【論文名】Characteristics of epitope dominance pattern and cross-variant neutralisation in 16 SARS-CoV-2 mRNA vaccine sera
【著者】Mayo Yasugi, Yu Nakagama, Natsuko Kaku, Yuko Nitahara, Noritoshi Hatanaka, Shinji Yamasaki, Yasutoshi Kido
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2023.08.076

資金情報

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)研究費(JP20wm0125003、JP20he1122001、 JP20nk0101627、 JP20jk0110021)ならびに日本学術振興会(JSPS)科研費(22K15927)からの支援を受けて行われました。

用語解説

※1 N末端領域(NTD)…N-terminal domainの略。新型コロナウイルスのエンベロープ(外殻を形成する脂質二重膜)上に突出するスパイクタンパク質の一部分のこと。この部分に対する抗体はウイルス感染を防御する中和抗体とウイルス感染を増強する感染増強抗体の2種類が報告されている。

※2 受容体結合領域(RBD)…Receptor binding domainの略。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部分のこと。ウイルスが哺乳類細胞に結合する際、哺乳類細胞の受容体に結合する領域であり、ウイルス感染の第一歩を司る。この部分に対する抗体は受容体へのウイルス結合を阻害することで感染を防御する中和抗体として知られている。

※3 感染増強抗体…NTDの一部分に対する抗体。結合することで受容体結合領域が安定して露出されるため、ウイルスの哺乳類細胞への結合能力が増強し、その結果感染効率が増す。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 獣医学研究科
准教授 安木 真世(やすぎ まよ)
TEL:072-463-5709
E-mail:shishimaru[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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