最新の研究成果
機械やロボットによる自動化とともに失業は増えない! 自動化の雇用への影響を分析
2023年10月11日
- 経済学研究科
- 研究
ポイント
◇生産における機械と労働の投入範囲とその変化
◇機械による労働の代替(自動化)と新しい仕事の創出の相互依存関係を分析
◇自動化の進行とともに失業が発生するが、新しい仕事がより増えていき、失業はやがて減少していくことを証明
概要
近年、IT技術や人工知能の発達による自動化が進み、「仕事が無くなるのでは」という不安の声も聞かれますが、そのような労働者の懸念は、産業革命以降たびたび起きていました。大阪公立大学経済学研究科の中村 英樹教授とヘブライ大学のJoseph Zeira教授はタスクモデルを用い、経済の均衡における自動化と新しい仕事の創出の関係、そして、それらの雇用への影響を理論的に分析しました。その直感的説明は以下のとおりです。
企業の生産において、ある仕事で、機械やロボットのコストパフォーマンスが労働者のそれより良くなれば自動化が進み、そこで働いていた労働者は必要なくなります。しかしながら、同時に利潤を狙って新しい財・サービスの開発も行われ仕事が創出されます。ここでもし、経済全体において仕事が減少することが起こったとしたら、労働への需要が減って賃金は下がっていき、そもそも自動化の必要性は無くなるでしょう。そうではなく、人間の仕事はむしろ増えていくからこそ、その労働コストを抑えるため自動化は進みます。つまり、自動化が起こりながら仕事が増えるので、失業は減少していきます。これらの結果、より効率的な付加価値生産が行われ、さらなる財・サービスの開発と自動化につながっていきます。
本研究成果は、2023年9月11日、国際学術誌「Journal of Economic Growth」にオンライン掲載されました。
掲載誌情報
【発表雑誌】Journal of Economic Growth
【論文名】Automation and unemployment: help is on the way
【著者】Hideki Nakamura, Joseph Zeira
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s10887-023-09233-9
中村 英樹教授のコメント
「自動化の経済への影響」は、以前から、私とJoseph Zeira教授は独立して研究を行っていましたが、今回、雇用への影響に関して一緒に取り組みました。一定の条件の下、世間の懸念と反する結論を導きましたが、一つの意見として捉えてもらえれば幸いです。なお、「経済における自動化の度合い」をデータで見ることはほぼ不可能ですが、容易に推定する方法の研究を進めています。
研究内容に関する問い合わせ先
経済学研究科
教授:中村 英樹(なかむら ひでき)
E-mail:hideki.nakamura[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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