最新の研究成果
肩痛研究最前線 骨粗鬆症薬として知られる副甲状腺ホルモンが腱板断裂の治療にも有効であることが明らかに
2023年10月31日
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- 研究
ポイント
◇腱板断裂後でも可能なアプローチとして期待大!
◇副甲状腺ホルモン(PTH)に脂肪の分解や、筋肉の萎縮抑制の機能があることに着目、ラットを使ったモデル実験で有効性を確認。
◇不可逆といわれる脂肪浸潤と筋萎縮の再生・改善を促す新たな一歩。
概要
腱板断裂とは、上腕骨と肩甲骨をつなぐ腱が、加齢などを主たる原因としてもろくなり、切れてしまう状態です。いわゆる四十肩・五十肩と混同される場合も多く、国内の患者数は50歳以上の4人に1人とも想定されています(注)。腱板が断裂した際、腱板筋の脂肪浸潤や筋萎縮の進行度合いにより、手術が行えない場合や、手術後の再断裂率が上がる問題が確認されています。(注:出典 日本整形外科学会雑誌2007)
大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の飯尾 亮介大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科 博士課程3年)、間中 智哉講師、中村 博亮教授らの研究グループは、PTHの投与により間葉系前駆細胞(FAPs)の褐色化を誘導し、腱板断裂に伴う腱板筋の脂肪浸潤と筋萎縮の進行が抑制されることを明らかにしました。
腱板断裂ラットモデルを用いた実験において、PTHを4週間と8週間投与し経過を観察。8週間では、対照群に比較して、PTH群で脂肪浸潤が約7割抑制、棘上筋の筋湿重量計測で筋萎縮が約5割抑制されていることが明らかになりました。さらに、マウスのFAPs培養実験では、PTH投与による褐色化関連遺伝子の発現量の上昇と、脂肪滴の蓄積抑制、筋分化促進効果も確認しました。
筋断裂ラットの実験のイメージ
本研究の成果は、米科学誌「The American Journal of Sports Medicine」にオンライン掲載されました。
研究者からのコメント
腱板断裂後に進行する腱板筋の筋量と質の低下に対する治療法は確立されていません。本研究では、PTHの投与により脂肪浸潤・筋萎縮の抑制効果があることを明らかにしました。またPTHが筋再生にも応用できる可能性があり、将来的にはロコモティブシンドロームや廃用症候群の治療にも繋げたいと考えています
飯尾 亮介大学院生
掲載誌情報
雑誌名 : |
The American Journal of Sports Medicine |
論 文 名: | Parathyroid Hormone Inhibits Fatty Infiltration and Muscle Atrophy After Rotator Cuff Tear by Browning of Fibroadipogenic Progenitors in a Rodent Model |
著 者: |
Ryosuke Iio, Tomoya Manaka, Naoki Takada, Kumi Orita, Katsumasa Nakazawa, Yoshihiro Hirakawa, Yoichi Ito, Hiroaki Nakamura |
掲載URL: | https://doi.org/10.1177/03635465231190389 |
研究に関する問い合わせ先
医学研究科 整形外科学
担当:飯尾 亮介(いいお りょうすけ)
TEL:06-6646-3851
E-mail: d21mb004[at]st.osaka-cu.ac.jp ※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
広報課 担当:田中
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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