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汎用品より放熱性が2倍向上! 高放熱性 窒化ガリウムトランジスタを実現

2023年12月1日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇ダイヤモンド基板上に作製した窒化ガリウム(GaN)トランジスタ(図1)の性能を評価。
◇炭化ケイ素基板を用いたGaNトランジスタと比べ、2倍以上の優れた放熱性を実証。
◇5G通信基地局や気象レーダーへの応用や小型化へも貢献。

概要

窒化ガリウム(GaN)トランジスタは、高出力・高周波半導体素子として、モバイルデータ通信の基地局や人口衛星通信システムなどに応用されています。トランジスタは、動作時の発熱が性能や寿命の低下の原因となるため、下層となる基板にはより放熱性の高い材料を用いる必要があります。しかし、現在最も普及している炭化ケイ素(SiC)を基板に用いたトランジスタでも、動作時の放熱性は不十分です。

大阪公立大学大学院 工学研究科の梁 剣波准教授、重川 直輝教授と東北大学金属材料研究所の大野 裕特任研究員、井上 耕治准教授、永井 康介教授、北京大学のZhe Cheng博士らの研究グループは、地球上で最も高い熱伝導率をもつダイヤモンドを基板に用いたGaNトランジスタを作製し、SiC基板上に作製した同一形状のトランジスタと比べて、放熱性を2倍以上高めることに成功しました(図2)。今後は、5G通信基地局や気象レーダー、衛星通信分野にとどまらず、従来真空管が使われてきたマイクロ波加熱やプラズマ加工分野への応用が期待されます。

本研究成果は、2023年11月15日(水)に国際学術誌「Small」に掲載されました。

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図1 ダイヤモンド基板上窒化ガリウムトランジスタ

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図2 Si、SiC、ダイヤモンド上に作製したトランジスタの放熱性の比較(同印加電力で温度上昇が小さいほど、放熱性は優れている)

ダイヤモンドの高い熱伝導率を最大限に発揮するには、界面の熱抵抗の低減が必要です。本研究では、GaNとダイヤモンドの間に3C-SiC層を導入したことにより、界面の熱抵抗を大幅に低減し、耐熱性を大幅に向上することができました。本成果によってGaN素子の放熱性が向上することで、素子の小型化や機器の省スペース化が可能となり、CO2排出量を大幅に削減する、エコな新技術の実現が期待されます。

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梁 剣波准教授

資金情報

本研究は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP20004)、東北大学金属材料研究所附属 量子エネルギー材料科学国際研究センター共同利用研究(202112-IRKMA-0016)、文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム(JPMXP09A21KT0006)からの支援を受けて実施されました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Small
【論文名】High thermal stability and low thermal resistance of large area GaN/3C-SiC/diamond junctions for practical device processes
【著者】Ryou Kagawa, Zhe Cheng, Keisuke Kawamura, Yutaka Ohno, Chihara Moriyama, Yoshiki Sakaida, Sumito Ouchi, Hiroki Uratani, Koji Inoue, Yasuyoshi Nagai, Naoteru Shigekawa and Jiambo Liang
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/smll.202305574

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
准教授 梁 剣波(りょう けんぼ)
TEL:06-6605-2973
E-mail:liang[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list@ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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