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2光子光電子分光法を用いた新解明!基板への斜め吸着が鍵 光照射時の電子の振る舞いを精密観測
2024年3月4日
- 工学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇トリフェニレン分子はグラファイト基板に対し斜めに吸着し薄膜を形成することを確認。
◇トリフェニレン分子膜の電子を、2光子光電子分光法※1を用いて精密観測。
◇トリフェニレン分子は、1層のみで形成した薄膜でも発光させることが可能。
概要
有機発光ダイオードや有機太陽電池など、低コスト、軽量、フレキシブルな有機デバイスでは、有機分子薄膜と基板材料との間の電子移動がその機能を支配するため、それらの界面での電子状態を知ることが重要です。
大阪公立大学大学院 工学研究科の野島 周人大学院生(博士前期課程2年)、渋田 昌弘准教授、金 大貴教授らと大阪大学の共同研究グループは、グラファイト基板上に吸着させたトリフェニレン(TP)分子薄膜の電子状態と表面構造を、2光子光電子分光法、走査型トンネル顕微鏡※2および低速電子回折※3を用いて観測しました。その結果、TP分子は基板に対して斜めに吸着する特殊な構造を持つことが分かり(図1)、光を照射した際に基板からTP分子に注入された電子と、分子薄膜内で光励起された電子との両方を、一つの試料で同時に観測することに成功しました。また、TP分子のように基板に対して分子が斜めに吸着する特殊な構造では、分子1層のみの薄膜でも強い発光が観測できることを明らかにしました。これらの成果は、新たな発光材料の開発や既存材料のさらなる機能向上において重要な知見となることが期待されます。
図1 グラファイト基板に斜めに吸着するトリフェニレン(TP)分子
本研究成果は、2024年1月24日に、国際学術誌「The Journal of Physical Chemistry C」にオンライン掲載されました。
本成果から、電子状態の見え方は分子の基板への吸着様式と電子物性に密接に関与していることがわかりました。つまり、分子の種類だけではなく、その並び方をきちんと制御したデバイスを作らないと機能を十分に引き出せないということです。2光子光電子分光法という電子状態の評価手法はまだ新しく、測定に時間がかかったり、電子状態がうまく観測できないという悩みはありますが、基礎研究の立場から応用に向けた機能設計指針を示せたことが嬉しく思います。
野島 周人大学院生
掲載誌情報
【発表雑誌】The Journal of Physical Chemistry C
【論文名】Probing of Photocarrier Electrons and Excitons at an Organic Monolayer Film Studied by Two-Photon Photoemission Spectroscopy
【著者】Shuto Nojima, Natsumi Murase, DaeGwi Kim, Hiroyuki S. Kato, Megumi Akai-Kasaya, Takashi Yamada, and Masahiro Shibuta
【掲載URL】https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.3c07596
資金情報
本研究の一部は、日本学術振興会 科学研究費補助金(23H01939、20H02549、18K04942)、文部科学省 卓越研究員事業(JPMXS0320220123)、公益財団法人 三菱財団、公益財団法人村田学術振興財団、公益財団法人 旭硝子財団、コニカミノルタ科学技術振興財団、公益財団法人 カシオ科学振興財団からの支援を受けて行われました。
用語解説
※1 2光子光電子分光法…固体表面に照射する2光子のうち、1光子目(ポンプ光)で励起された電子を、引き続く2光子目(プローブ光)によって光電子として放出として検出する手法で、固体表面の電子準位を明らかにできる。また、ポンプ光とプローブ光に時間差を設けてプローブ光を遅延させることで、この電子が、励起後にどのように時間発展するかを電子ダイナミクスとして観測できる。
※2 走査型トンネル顕微鏡…尖った金属先端を試料表面に近づけ、電子がトンネル効果を利用して流れる現象を利用して計測する。原子レベルでの高い解像度で表面構造を可視化でき、表面の重要な物性を検出できる。
※3 低速電子回折…表面原子の秩序配列を、電子波の干渉した回折パターンから調べる手法。通常30~150eVのエネルギーの電子を表面に照射して後方散乱した回折パターンを観察する。表面原子が原子レベルで平坦な面上にあり、乱れなく秩序配列していると、表面周期性を反映した綺麗な回折スポットが現れる。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 工学研究科
准教授 渋田 昌弘(しぶた まさひろ)
TEL:072-247-6162
E-mail:shibuta[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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