最新の研究成果
―日本の伝統的教育のメンタリティとは?― 禅仏教・哲学的「自然概念」が影響していることを明らかに
2024年3月21日
- 文学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇日本における教育・保育のメンタリティのルーツを明らかに。
◇「自発的な」という意味の「みずから」と、「自然にそうなる」という意味の「おのずから」(※)という二つの概念が含まれる自然の概念に注目。
◇幼児教育と哲学研究の両巨塔を比較した初めての成果。
概要
日本における教育・保育の特徴として「見守り」を重視することが挙げられます。これは、子どもたちの「自主性・自発性」を尊重しているともいえます。
大阪公立大学大学院文学研究科の弘田 陽介教授は、教育・保育における自主性・自発性の考え方について、「日本の幼児教育の父」といわれる倉橋 惣三と、京都学派の代表的哲学者の西田 幾多郎を比較。日本の教育・保育のメンタリティには、禅に見られるような自発性とそれを超える超越性を併せ持つ「自然概念」が潜在的に影響していることを明らかにしました。また、これまで直接交流がなかったと言われる倉橋・西田ともに、1930年代当時の日本の思想に通底する自然概念をもっていたことも示されました。
遊具で遊ぶ子ども(©大阪公立大学)
本研究成果は、2024年3月14日(木)、国際学術誌「History of Education」のオンライン速報版に掲載されました。
日本では、さまざまな領域で「自然さ」を求める傾向がありました。特に教育や保育では、子どもの活動を「見守る」ことができるのがよい教育者の条件として挙げられます。このような「自然さ」をよいものと考えるメンタリティはどこから来ているのでしょうか。ルソー主義といわれるような子どもの自発性を重視する思想は、近代になって日本に移入されるのですが、私自身はその根は前近代の日本の「学び」にあると思い、そのことを歴史的に探究しました。
弘田 陽介教授
掲載誌情報
【発表雑誌】History of Education
【論文名】The concept of nature underlying early childhood education and care from pre-modern to contemporary Japan, via Sozo Kurahashi and Kitaro Nishida
【著者】Yosuke Hirota
【掲載URL】https://doi.org/10.1080/0046760X.2024.2304353
資金情報
本研究は、科学研究費補助金 基盤研究(B)(No. 21H00827)の支援を受けて実施されました。
用語解説
※「みずから」は自己の有限性と個人性に基づく限りでの自発性を示し、「おのずから」はそれらを超えた超越性を指す。
研究内容に関する問い合わせ先
文学研究科 人間行動学専攻
教授 弘田 陽介
TEL:06-6605-2388
E-mail:y-hirota[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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