最新の研究成果

ピコ秒レーザーによるシミ・アザ治療の有効性向上へ! 臨床医学と工学の融合で治療時の照射指標を開発

2024年3月19日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇ピコ秒レーザーによる色素性病変治療における波長別照射条件指標を開発。
◇今回開発した指標により合併症が少なく、高い有効性を示した臨床結果を説明できる。
◇これまで医師の経験則等で行われていた治療に、新たな参考指標として活用される可能性。

概要

青アザや茶アザ、老化によってできるシミ等は、皮膚組織の一部にメラニン色素が過剰に沈着する症状で、色素性病変と呼ばれています。レーザー照射による治療が主流で、近年では、ピコ秒(1兆分の1秒)領域の短い時間でレーザーを照射するピコ秒レーザーによる色素性病変治療が注目されています。

大阪公立大学大学院医学研究科皮膚病態学の下条 裕ポスドク研究員、小澤 俊幸特任教授、鶴田 大輔教授、大阪大学大学院工学研究科の西村 隆宏助教、香港大学医学部皮膚科のH.H.L. Chan名誉臨床教授、東海大学医学部外科学系形成外科の河野 太郎教授らの研究グループは、色素性病変治療の臨床現場で利用されているピコ秒レーザーについて、波長ごとのレーザー照射指標を初めて開発しました。さらに本研究では、既報の臨床研究と比較を行い、合併症の発生率が低く、高い有効性を示した臨床結果は本指標を根拠に説明できることも確認しました。本指標を活用することは、臨床現場における照射条件設定において大いに役立つことが予想されます。また、医師の経験則等だけに頼らず科学的根拠に基づくピコ秒レーザー治療が実践されることで、治療の安全性と有効性の向上にもつながると期待されます。

press_0304

本研究成果は、2024年3月4日、米国レーザー医学会が発刊する国際学術誌「Lasers in Surgery and Medicine」にオンライン掲載されました。



臨床医学と工学を融合させた本研究成果は、レーザーによる生体反応を理解して光照射することが安全かつ有効な治療のために重要であることを示しています。今後、科学的根拠に基づくピコ秒レーザー治療に貢献することが期待されます。

press_0304_nojima

下条 裕ポスドク研究員

掲載誌情報

【発表雑誌】Lasers in Surgery and Medicine
【論文名】Wavelength-dependent threshold fluences for melanosome disruption to evaluate the treatment of pigmented lesions with 532-, 730-, 755-, 785-, and 1064-nm picosecond lasers
【著者】Yu Shimojo, Takahiro Nishimura, Daisuke Tsuruta, Toshiyuki Ozawa, Henry Hin Lee Chan, Taro Kono
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/lsm.23773


プレスリリース全文(809.5KB)

資金情報

本研究は、日本学術振興会科研費 特別研究員奨励費「超短パルスレーザーに基づくコンピュテーショナルレーザー治療システムの臨床実証」(研究代表者:下条 裕、23KJ1825)、科学技術振興機構ACT−X「非接触・非侵襲なロボット支援下レーザー手術機の開発」(研究代表者:下条 裕、JPMJAX21K7)の助成を受けたものです。

用語解説

※ ピコ秒レーザー:パルス幅がピコ秒オーダーのレーザー。パルス幅が短く、パワー密度が高いため、周辺組織への熱拡散を抑えて、メラノソームに効率良く光吸収させることができる。ピコ秒レーザーは、色素性病変治療だけでなく刺青除去などさまざまな皮膚疾患に対して現在臨床研究されている。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科
皮膚病態学 薬物生理動態共同研究部門
ポスドク研究員:下条 裕(しもじょう ゆう)
TEL:06-6645-3693
E-mail:x22800k[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs03
  • SDGs09