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日本原産ユリ属の新種を発見! 〜 形とDNAの解析で8つに分類し学名を整理 〜

2024年3月28日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

スカシユリ類(ユリ科ユリ属)は、上向きでオレンジ色の花をつける植物で、これまで4つの分類群が認められてきました。観賞価値が高いこともあり、200年以上前から野生種や国内で作られた園芸品種が国外へ輸出されてきました。そのため、海外で学名が記載されることも多く、このスカシユリ類につけられた学名は100を超えています。また、野生種の識別も曖昧なものが多く分類学的な課題が多々存在していました。
大阪公立大学大学院理学研究科の渡邉 誠太特任助教と京都大学大学院理学研究科の田村 実教授、布施 静香准教授らの研究グループは、これらのスカシユリ類の形とDNAの解析を行い、従来の分類を改定。スカシユリ類を8つに分類しました(図2)。また、1914年に牧野 富太郎博士が記載したタモトユリ以来、日本産ユリ属としては110年ぶりの新種となるミナミスカシユリを発見しました(図1)。この植物は本州(茨城県〜静岡県)と伊豆諸島の海岸に生育し、葉の先端が爪状に曲がるという面白い特徴をもっています(図3)。新認識の8つの分類群の内、7つは日本固有植物で、海岸から山地まで各環境に適応しており、独自の形質を進化させています。これらは複雑な過程を経て分化してきたと考えられ、この研究が種分化研究の手がかりになることが期待されます。
本研究成果は国際学術誌「TAXON」に2024年2月16日にオンライン掲載されました。

図1. 新種のミナミスカシユリ
Lilium pacificum S.T.Watan., Fuse & M.N.Tamura

図2. 新たな分類:3種2変種2品種1雑種

図3.改定後の分類例。サドスカシユリ(左)とミナミスカシユリ(右)の葉の違い
ミナミスカシユリ(右)は葉の先端が爪状に外側に曲がり、
サドスカシユリ(左)を含むその他のスカシユリでは先端は直線状に伸びる。

こんなに花が目立つユリでも、形態を詳しく見ていくと似て非なるものがあり、DNAの力を使ってより明確にすることができました。一見するとシンプルな植物のため、個々の差が見落とされてきたのかもしれません。本研究を通して形態観察の重要性を改めて感じました。また、学名を決定する上でさまざまな言語で書かれた膨大な数の文献を調べる必要があり、これも中々大変でした。

渡邉 誠太特任助教

 

掲載誌情報

雑誌名:

TAXON

論文名:

Biosystematic studies on Lilium (Liliaceae) II. Evolutionary history and taxon recognition in the L. maculatum–L. pensylvanicum complex in Japan

著者:

Seita T. Watanabe, Kazuhiko Hayashi, Katsuro Arakawa, Shizuka Fuse, Koji Takayama, Hidetoshi Nagamasu, Minoru N. Tamura

掲載URL

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/tax.13141

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科/附属植物園
担当:渡邉 誠太
TEL:072-891-2681
E-mail:seiwatanabe[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:上嶋 健太
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

該当するSDGs

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