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全固体ナトリウム電池実用化の鍵!世界最高のナトリウムイオン伝導度を有する固体電解質を合成
2024年4月5日
- 工学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇全固体ナトリウム電池の実用化に向け、硫化物固体電解質の量産性の高い合成プロセスを開発。
◇開発したプロセスを用いて、世界最高のナトリウムイオン伝導度を有する固体電解質を合成。
◇低コストかつ高い安全性が期待できるとして、リチウムイオン電池と並び高い注目を集める全固体ナトリウムイオン電池の、実用化に向けた大きな研究成果。
概要
再生可能エネルギーの有効利用に向けて二次電池の需要が高まっています。最も使用されているのはリチウムイオン電池ですが、より低コストかつ資源量が豊富で、高い安全性が期待できることから全固体ナトリウム電池が注目を集めています。現在、有機電解液を用いるナトリウムイオン電池開発は、中国でEV車への搭載が進められるステージまで進んでいますが、電池の全固体化に向けて、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質の合成には複雑な処理が必要なため量産が難しく、社会実装には量産性の高い新たな合成プロセスが求められています。
大阪公立大学大学院 工学研究科の奈須 滉大学院生(現 北海道大学大学院理学研究院 助教)、音野 智哉大学院生、本橋 宏大助教、作田 敦准教授、林 晃敏教授らの研究グループは、多硫化ナトリウム(Na2Sx)の不揮発性に着目し、これを原料と反応媒体としての機能を兼ね備えるセルフフラックスとして利用することで、ナトリウム含有硫化物の量産性の高い合成プロセスを開発しました(図1)。また、本プロセスを用いることで、実用化に必要とされるイオン伝導度の約10倍である10−1 S cm−1を超える、世界最高のナトリウムイオン伝導度を有する硫化物固体電解質(Na2.88Sb0.88W0.12S4)(成果①)や、高い耐還元性を有するガラス電解質(Na3BS3-SiO2ガラス)の合成(成果②)に成功しました。本成果は、硫化物系全固体ナトリウム電池実用化への貢献が期待されます。
図1 多硫化ナトリウム(Na2Sx)をセルフフラックスとして用いた合成プロセス
成果①は、2月27日にElsevier社が刊行する国際学術雑誌「Energy Storage Materials」のオンライン速報版に、また成果②は、3月1日に米国化学会が刊行する国際学術雑誌「Inorganic Chemistry」のオンライン速報版に、それぞれ掲載されました。
今回開発したプロセスは、固体電解質や電極活物質をはじめとする、ほぼ全てのナトリウム含有硫化物材料の生産に適応できる有用なプロセスです。さらに従来法よりも高性能を示す材料が得られやすいので、今後の全固体ナトリウム電池用材料開発の主流になると考えられます。
作田 敦准教授
掲載誌情報①
【発表雑誌】 Energy Storage Materials(IF = 20.4)
【論文名】 Utilizing reactive polysulfides flux Na2Sx for the synthesis of sulfide solid electrolytes for all-solid-state sodium batteries
【著者】 Akira Nasu, Tomoya Otono, Takuma Takayanagi, Minako Deguchi, Atsushi Sakuda*, Masahiro Tatsumisago, Akitoshi Hayashi*
【論文URL】https://doi.org/10.1016/j.ensm.2024.103307
掲載誌情報②
【発表雑誌】 Inorganic Chemistry(IF = 5.436)
【論文名】 High-Sodium-Concentration Sodium Oxythioborosilicate Glass Synthesized via Ambient Pressure Method with Sodium Polysulfides
【著者】 Tomoya Otono, Akira Nasu, Taichi Asakura, Hiroe Kowada, Kota Motohashi, Masahiro Tatsumisago, Atsushi Sakuda*, Akitoshi Hayashi*
【論文URL】https://doi.org/10.1021/acs.inorgchem.3c04101
資金情報
本研究は、JSPS科研費(JP20K05688、JP20J23722、JP21H04701、JP23H02071)の支援を受けて行われました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 工学研究科
物質化学生命系専攻 応用化学分野
准教授 作田 敦(さくだ あつし)
TEL:072-254-9334
E-mail:saku[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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