最新の研究成果
プラズマ照射で難治性骨折の治癒を促進 - 医工連携で挑む次世代型 骨再生医療 -
2024年4月17日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇難治性骨折をラットモデルで作製し、プラズマを骨折部に直接照射。
◇プラズマ照射による治癒促進を確認、損傷部強度は約3.5倍に上昇。
◇医学×工学の新治療法による成果を、放射線学・生体力学・組織学的観点から多角的に検証。
概要
子どもからお年寄りまで年齢に関係なく誰にでも起こりうる骨折。骨のずれが大きい場合や、折れ方が複雑な時には、金属のねじやプレートを使用して骨折部を固定する手術が必要です。手術を行っても治るまでには一定期間が必要で、動けない状態が長く続くと高齢者の場合では寝たきりになったり、若い世代においても社会復帰に時間がかかってしまいます。
大阪公立大学大学院医学研究科 整形外科学の斉藤 公亮大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科 博士課程3年)、豊田 宏光准教授、中村 博亮教授(研究当時)、同大学院工学研究科 医工・生命工学教育研究センターの呉 準席教授らの共同研究グループは、骨折した骨が癒合する(骨がくっつく)までの期間を短縮できる治療法として、プラズマ照射に注目しました。本研究では、骨癒合することが極めて困難な難治性骨折ラットモデルを作製し、低温大気圧プラズマを生体に直接照射しました(図)。その結果、プラズマ照射した群は、照射していない群(コントロール群)と比べて明らかに骨癒合が進んでいることが確認できました。また、癒合した部位の強度を調べると、コントロール群に比べて約3.5倍強いことも分かりました。さらに本研究では細胞への影響を調べるため、ラットの前骨芽細胞株にプラズマを5~15秒間照射しました。その結果、骨芽細胞が骨細胞へ分化する際の指標となるタンパクの活性が上昇し、骨芽細胞の成熟が進んでいることが分かりました。
今後、現在行われている骨折治療と本治療を組み合わせることで、より確実な骨癒合や治療期間短縮への貢献が期待されます。
図:生体への直接照射
本研究成果は、2024年4月17日(水)、国際科学誌「PLOS ONE」にオンライン掲載されました。
医学分野と工学分野が連携することで、これまでになかった新しい医療技術が創出されます。低温大気圧プラズマを活用した骨癒合促進技術はそのひとつになりえると考えます。
今後は、医獣連携や産学連携にも挑戦し、臨床の現場に届けられる技術になるよう研究を重ねたいと思います。
豊田 准教授 斉藤 大学院生 呉 教授
掲載誌情報
【発表雑誌】PLOS ONE
【論文名】Fracture healing on non-union fracture model promoted by non-thermal atmospheric-pressure plasma
【著者】Kosuke Saito, Hiromitsu Toyoda, Mitsuhiro Okada, Jun-Seok Oh, Katsumasa Nakazawa, Yoshitaka Ban, Kumi Orita, Akiyoshi Shimatani, Hana Yao, Tatsuru Shirafuji, Hiroaki Nakamura
【掲載URL】https://doi.org/10.1371/journal.pone.0298086
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 医学研究科
准教授:豊田 宏光(とよだ ひろみつ)
TEL:06-6645-3851
E-mail:h-toyoda[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:上野
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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