最新の研究成果
-日本でも大規模集団食中毒の原因に-新興人獣共通感染症の新たな検出法を開発
2024年5月2日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇リアルタイムPCR法※1による、新興人獣共通感染症菌Escherichia albertiiの検出法を開発。
◇E. albertiiは少なくとも約4週間腸管内で生存し、継続的に排菌されることが明らかに。
◇兄弟で感染していたE. albertiiの菌体DNAの遺伝子型が同じで、家族内感染の可能性を示唆。
概要
Escherichia albertiiは、1991年にバングラデシュで発見された新興人獣共通感染症の食中毒病原体で、特に小児において重篤な症状を引き起こします。日本でも、E. albertiiによる大規模な集団食中毒が発生していますが、同じ腸管病原性大腸菌やO157に代表される腸管出血性大腸菌などと誤同定されることも多く、その診断方法は確立されていません。
大阪公立大学大学院獣医学研究科の山﨑 伸二教授、アワスティ シャルダ プラサダ特任准教授らと水島中央病院(岡山県)の共同研究グループは、リアルタイムPCR法を用いたE. albertiiの新たな検出法を開発。本検査法では、E. albertiiが検体中にわずか1ピコグラムでも含まれていれば検出可能で、従来のPCR法や培養法に比べ約10倍、検出感度が向上しました。本手法を用いて水島中央病院に来院した患者から採取した検体を調べたところ、E. albertiiは腸管内で約4週間生存し、便中に排菌され続けることが分かりました。また、兄弟で感染していたE. albertiiの菌体DNAの遺伝子型が同一であったことから、家族内感染が起こった可能性も示唆されました。本成果は、E. albertii胃腸炎に対する適切な治療法の選択だけでなく、感染源や感染経路の解明への貢献が期待されます。
本研究成果は、2024年4月26日に国際学術誌「Heliyon」のオンライン速報版に掲載されました。
一部のE. albertiiは2型志賀毒素を産生することから小児や老人が胃腸炎を発症した場合に重症化する可能性があります。野生動物が保菌しており環境水が汚染され、農作物を汚染し、ヒトへの感染源となっている可能性が指摘されています。臨床検査のみならず感染源や感染経路の特定に役立つことが期待されます。
山﨑教授(左)、アワスティ特任准教授(右)
掲載誌情報
【発表雑誌】Heliyon (Cell Press)
【論文名】Detection of prolong excretion of Escherichia albertii in stool specimens of a 7-year-old child by a newly developed Eacdt gene-based quantitative real-time PCR method and molecular characterization of the isolates
【著者】Sharda Prasad Awasthi, Akira Nagita, Noritoshi Hatanaka, Jayedul Hassan, Bingting Xu, Atsushi Hinenoya, and Shinji Yamasaki*
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e30042
資金情報
本研究の一部は、JSPS科研費(17H04651)からの支援を受けて実施しました。また、本研究で使用したE. albertiiの一部の株は、熊本県保健環境科学研究所、秋田県健康環境センター、愛知県衛生研究所、神戸市健康科学研究所より提供を受けました。
用語解説
※1 リアルタイムPCR法…通常のPCR法より検出感度が高く、標的遺伝子の定量もできる検査法。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院獣医学研究科 教授
大阪国際感染症研究センター 副センター長
山﨑 伸二(やまさき しんじ)
TEL:072-463-5653
E-mail:yshinji[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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