最新の研究成果

鉄鋼部品の表面硬化処理における、炭素・窒素と合金元素の結合メカニズムを解明

2024年5月15日

  • 情報学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇鋼製歯車などの表面を硬くするための、炭素や窒素を添加する処理に着目。
◇添加処理におけるアルミニウムやチタンなど12種類の合金元素について、120パターンの組み合わせを理論計算し、結合メカニズムを体系的に解明。

概要

日常生活に不可欠な自動車や電車の主な材料の一つは鉄鋼です。鉄鋼には鉄のほかに、シリコンやマンガンなどさまざまな合金元素が含まれており、その組み合わせにより強さや柔軟さをもつ高機能な鉄鋼材料が作られます。また、エンジンの歯車などの部品には非常に大きな負荷がかかります。そのため、炭素を浸み込ませ加熱して硬化する浸炭や、窒素を内部に拡散浸透させて硬い層を作る窒化を活用し、鉄鋼部品の表面に耐食性や耐摩耗性をもたせます。これらの処理において、炭素や窒素が合金元素と結びつくことによって硬化することは知られていますが、合金元素がそれぞれどのように結合するかについて体系的な調査は行われていませんでした。

大阪公立大学大学院情報学研究科の上杉 徳照准教授、工学研究科の瀧川 順庸教授、大阪公立大学工業高等専門学校の東 健司校長(当時、大阪府立大学教授)らの研究グループは、浸炭と窒化において、アルミニウムやチタンなど計12種類の合金元素がそれぞれ炭素や窒素とどのように相互作用するかについて、120パターンの組み合わせを理論計算しました。その結果、チタンが特定の場所に配置するときに窒素や炭素と結びつき、鉄が硬化することが分かりました。また、鉄原子より大きい元素でないと結合しないことを解析データで示しました。本成果により、鉄鋼の強化と耐久性向上のメカニズムについて理解を深め、より優れた材料開発への貢献が期待できます。

本成果は2024年4月6日に「ISIJ International」のオンライン速報版に掲載されました。

窒化処理イメージ

多数の計算結果からのメカニズム解明は容易ではありませんでしたが、重回帰分析と層別分析を用いて試行錯誤を重ねました。今後、さらに多くの組み合わせについて機械学習で分析を進め、実際の製造プロセスでの材料性能向上に寄与する知見が得られることを期待しています。

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上杉 徳照准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】ISIJ International
【論文名】Interactions between interstitial and substitutional elements of solute diatomic and triatomic clusters in α-Fe from first-principles calculations
【著者】Tokuteru Uesugi, Shuji Ashino, Yorinobu Takigawa, Kenji Higashi
【掲載URL】https://doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2024-062

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院情報学研究科
准教授 上杉 徳照(うえすぎ とくてる)
TEL:072-254-9483
E-mail:uesugi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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