最新の研究成果

日本での「好酸球性食道炎」の疾患動向を初めて明らかに -1500万人以上の大規模レセプトデータから分析-

2024年5月29日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇指定難病「好酸球性食道炎」の日本での罹患率※1を、18年間のレセプトデータを用いて大規模調査。
◇欧米同様に罹患者数が増加していることが判明。
◇生活習慣関連因子である喫煙と飲酒が、それぞれ発症リスクの低下と上昇に寄与。

概要

好酸球性食道炎(EoE:Eosinophilic esophagitis)は、つかえ感や胸やけなどの食道症状を引き起こす、指定難病の一つです。原因は食物や空気中に浮遊しているアレルゲンで、30代~40代の中年男性に多い疾患です。欧米では約30年前から罹患者数が急激に増加していますが、日本を含めたアジアでは詳しい調査が行われておらず、その動向は不明でした。

大阪公立大学大学院医学研究科 消化器内科学の沢田 明也病院講師、田中 史生准教授、藤原 靖弘教授、医療統計学の今井 匠特任講師(現 神戸大学医学部附属病院 特命准教授)、井原 康貴大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科 博士課程4年)らの研究グループは、2005年から2022年に収集した15,200,895人の大規模レセプトデータを用いて、日本におけるEoEの罹患率を初めて調査しました。その結果、2022年のEoE罹患率は10万人年あたり2.82人で、2017年と比較すると3倍に増加していました。さらに、EoE関連因子の解析では、喫煙が発症リスクの低下、飲酒が発症リスクの上昇に寄与していることが明らかになりました。本成果は、EoE発症への遺伝や環境因子の関与について、さらなる理解のために役立つことが期待されます。

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本研究成果は、2024年5月14日に、国際学術誌「Clinical Gastroenterology and Hepatology」のオンライン速報版に掲載されました。

診療の現場で、好酸球性食道炎の患者さんが日本でも増加していることを実感していました。今回大規模データを用いることで実際に罹患率や有病率の増加を確認することができました。今後、さらなる疾患認知度向上につながることを期待しています。

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沢田 明也病院講師

掲載誌情報

【発表雑誌】Clinical Gastroenterology and Hepatology
【論文名】Epidemiology and Risk Factors of Eosinophilic Esophagitis in Japan: A Population-Based Study
【著者】Akinari Sawada, Takumi Imai, Yasutaka Ihara, Fumio Tanaka, Ikuo Hirano, Yasuhiro Fujiwara
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.cgh.2024.04.035

資金情報

本研究は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社の研究助成(Grants for patient’s life, #75267729)を受けて行われました。

用語解説

※1 罹患率…一定期間にどれだけの疾病者が新たに発生したかを示す指標。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科
病院講師 沢田 明也(さわだ あきなり)
TEL:06-6645-3811
E-mail:a.sawada[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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