最新の研究成果

チタン原子核の構造が中心からの距離で変化することを発見 -人類の原子核に対する新しい見方を提示-

2024年5月29日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇チタン48原子核がどのような構造を持つか、理論計算と実験データから検証。
◇原子核の中心からの距離により、原子核構造が遷移することを明らかに。
◇人類の原子核に対する新たな見方を提示。

概要

大阪公立大学大学院理学研究科の岡田 磨弦大学院生(博士前期課程2年)、堀内 渉准教授、板垣 直之教授の研究グループは、チタンの原子核であるチタン48が、殻構造1またはαクラスター構造2のどちらの原子核構造を持つのか、理論模型を用いた計算結果と既存の実験データを比較。チタン48は、原子核の中心からの距離によって、殻構造からαクラスター構造に変化していることを明らかにしました(図)。本成果は、これまでの原子核構造の理解を覆すもので、約100年間解決されていない重い原子核で起こるα崩壊3機構の、解明の糸口を与えることが期待されます。

本研究成果は、2024年5月24日に国際学術誌「Physical Review C」のオンライン速報版に掲載されました。

press_0529_1図 チタン48における原子核構造の変化

私たちの開発した解析方法により、チタン48のような中重原子核の中心部分では殻構造、ごく表面ではαクラスター構造を持つことが実証されました。このような構造転移が示されたのは初めてで、新しい原子核の見方を与えるものです。今後は、本研究によって得られた成果を拡張し、より重い原子核の未解決問題に挑戦したいと思っています。

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堀内准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Physical Review C
【論文名】Shell-cluster transition in 48Ti
【著者】M. Okada, W. Horiuchi, and N. Itagaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1103/PhysRevC.109.054324

資金情報

本研究は、JSPS科研費(18K03635、22H01214、22K03618)の支援を受けて行われました。

用語解説

※1 殻構造…原子核構造の標準的な見方。原子核の周りを運動する電子の運動との類推で、原子核を構成する陽子や中性子(核子)も、原子核中心の周りをある軌道に従い独立に運動する、と考える模型。ある特定の核子数で原子核が安定化する「魔法数」を説明することができ、この模型を提案したメイヤーとイェンゼンは1963年にノーベル物理学賞を受賞している。

※2 αクラスター構造…原子核内にα粒子(ヘリウム原子核)の塊が存在する原子核構造。 核子間に作用する核力の性質により、陽子2つ、中性子2つが 極めて固く結合するためこのような構造が生じ得る。 主に軽い原子核において現れ、星の中で炭素が3つのα粒子から合成される過程などにおいて、重要な役割を果たす。

※3 α崩壊…原子核が高速のα粒子を放出し、より安定な原子核へと遷移する過程。多くの重い原子核の典型的な崩壊過程であり、歴史的にはこの発見が放射能の概念を生み出した。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
准教授 堀内 渉(ほりうち わたる)
TEL:06-6605-2639
E-mail:whoriuchi[at]omu.ac.jp

教授 板垣 直之(いたがき なおゆき)
TEL:06-6605-2537
E-mail:itagaki[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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