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雇用形態の変化は自分らしさの確立に影響する! 20代の雇用形態と心理発達の関係を追跡調査

2024年5月30日

  • プレスリリース
  • 現代システム科学研究科

ポイント

◇20代後半では、職を得ることではなく、失うことがアイデンティティ確立に影響を及ぼす。

◇雇用形態にかかわらず、アイデンティティと人生満足感は関連している。

概要

アイデンティティは自分らしさの感覚のことで、心理的な健康と強い関わりがあります。12歳から24歳前後の青年期に発達すると考えられており、特に、大学を卒業する頃の20代前半の成人にとって、正規職に就くことはアイデンティティの確立に重要な役割を果たすとされています。しかし、アイデンティティの発達は生涯にわたるプロセスであるため、青年期にとどまらず、その後の時期の心理的健康においても大変重要です。

大阪公立大学大学院現代システム科学研究科の畑野 快准教授らの研究グループは、20代後半のアイデンティティの発達をより理解するために、雇用形態とアイデンティティおよび人生満足感の関連について調査しました。日本人の成人男女875名(欠損値含む)を対象として、2015年と2019年に追跡調査を実施。回答者を、正規職、非正規職、無職、職を得た群、職を失った群の5つのグループに分類し、グループごとのアイデンティティを得点化して比較しました。その結果、20代後半では、職を得ることではなく、失うことがアイデンティティ確立に大きな影響を及ぼすこと、また、雇用形態に関係なく、アイデンティティと人生満足感の得点の高さには正の関連があることが分かりました。本結果は、臨床および産業心理の分野に重要な示唆を与えます。

本成果は、2024年5月15日「Journal of Youth and Adolescence」にオンライン掲載されました。

<研究者からのコメント>

アイデンティティは青年期の中心的な課題と考えられてきましたが、成人期においてもウェルビーイングを支える重要な要素であることが、本研究により初めて示すことができました。この知見を基に、成人の心理・社会的発達に関する理解がさらに深まることを期待しています。

畑野准教授畑野 快准教授

掲載紙情報

発表雑誌: Journal of Youth and Adolescence
論 文 名: Does Employment Status Matter for Emerging Adult Identity Development and Life Satisfaction? A Two-wave Longitudinal Study
著     者: Kai Hatano, Shogo Hihara, Manabu Tsuzuki, Reiko Nakama, Kazumi Sugimura
掲載URL: https://doi.org/10.1007/s10964-024-01992-x 

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院現代システム科学研究科
准教授:畑野 快(はたの かい)
TEL:072-254-9614
E-mail:kai.hatano[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

広報課 担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

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