最新の研究成果

氷への浸透力が鍵! 環境負荷を大幅に低減する融氷剤を実現

2024年6月7日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇融氷剤が氷や雪を溶かす新たなメカニズムを解明。
◇機械学習により、高性能で環境に優しい融氷剤材料の組み合わせを発見。

概要

融氷剤は、市街地や滑走路、航空機などの雪や氷を溶かすために使用されますが、道路や橋などの金属が錆びたり、環境水へ溶けることで公害の原因となるため、より環境に優しい材料の開発が求められています。

大阪公立大学大学院工学研究科の伊藤 魁大学院生(当時 博士前期課程2年)、深津 亜里紗助教、岡田 健司准教授、髙橋 雅英教授らの研究グループは、21種類の塩の水溶液と16種類の有機溶媒を用いて融氷メカニズムを分析。塩と有機溶媒では融氷メカニズムに違いがあること、さらに、氷や雪の表面を覆う薄い水の膜に溶けて凝固点を下げるだけでなく、氷や雪の内部へ入り込み内側から溶かす浸透力が働いていることを明らかにしました。また、機械学習により、塩と有機溶媒の組み合わせが融氷効率を向上させることを導き出し、市販されている6種類の融氷剤と比べて性能が高く、環境負荷を大幅に低減できる融氷剤材料の組み合わせを発見しました。

本研究成果は、2024年6月7日(金)に国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン速報版に掲載されました。

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図1 本研究で作製した融氷実験装置の模式図

道路や飛行機などに積もった雪や氷を融かし、より良い生活をサポートしている融氷剤について、機械学習を用いてより高機能な融氷剤を作製する方針を示せたことを光栄に思います。機械学習法の選定・適用に特に苦労しましたが、結果を可視化できたときは非常に嬉しく思いました。

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伊藤 魁大学院生

古くから身近で利用されてきたものの、経験的に材料が選択されてきた部分も大きい融氷剤について、メカニズムの観点から新たな切り口を提案しました。実験装置の作製から膨大なデータの収集、機械学習を用いた解析まで、地道な作業をやり遂げた伊藤魁君の努力の賜物です。

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深津 亜里紗助教

掲載誌情報

【発表雑誌】Scientific Reports
【論文名】Machine learning-assisted chemical design of highly efficient deicers
【著者】Kai Ito, Arisa Fukatsu*, Kenji Okada and Masahide Takahashi*
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41598-024-62942-y

資金情報

本研究は、JSPS科研費 基盤研究(A)(JP20H00401)、若手研究(JP22K14492)、泉科学技術振興財団、関西エネルギー・リサイクル科学研究振興財団、日本板硝子材料工学助成会の支援を受けて行われました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
教授 髙橋 雅英(たかはし まさひで)
TEL:072-254-9309
E-mail:masa[at]omu.ac.jp

助教 深津 亜里紗(ふかつ ありさ)
TEL:072-254-9812
E-mail:fukatsu[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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