最新の研究成果

座布団カバー型の図形を使用し、素粒子に質量が生まれるパターンを解明

2024年6月7日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇左手型と右手型※1の素粒子がヒッグス場※2と結合することにより、素粒子に質量が生まれる。
◇余剰次元空間を座布団カバー型の図形と考え、質量が生まれる特異点への巻き付き方を解明。
◇左手型と右手型の素粒子がそれぞれ別の特異点に巻き付く場合は、質量は生まれない。

概要

私たちの身の回りの物は原子でできており、原子は原子核と電子で構成されています。さらに細かく見ると、原子核をつくる陽子・中性子はクォーク、電子はレプトンという素粒子で構成されています。クォークとレプトンに質量があることは実験でも示されており、左手型と右手型の素粒子がヒッグス場と結合することにより質量が生まれます。しかし、質量の違いにより3世代構造になることは分かっていますが、その起源は解明されていません。また、世代ごとの素粒子の質量が桁違いに異なる理由も分かっていません。

大阪公立大学大学院理学研究科の今井 広紀大学院生(博士後期課程2年)、丸 信人教授の研究グループは、余剰次元空間3を座布団カバーのような図形と考え、四隅の特異点において、左手型と右手型の素粒子がそれぞれ別の特異点に巻き付く場合は質量が生まれないことを発見しました。本研究結果は、素粒子の謎の解明に新たな知見を与えます。

本研究成果は、2024年5月9日、「Progress of Theoretical and Experimental Physics」にオンライン掲載されました。

質量を生成できる巻き付き(〇印)と、できない巻き付き(×印)の例

図の赤い線は左手型素粒子の巻き付き、青い線は右手型素粒子の巻き付きを表す。研究の結果、左手型と右手型がそれぞれ別の特異点に巻き付いている場合、質量は生成されないことが判明した。

素粒子の世界には謎がたくさんあります。この謎を解き明かすカギは、目に見えない4次元・5次元の幾何学なのでは?と考え、観測結果をヒントに「目に見えない幾何学」を暴き出したいと思いました。答えは意外と身近な図形にあるかもしれませんね!

今井 広紀大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Progress of Theoretical and Experimental Physics
【論文名】Toward Realistic Models in T2/Z2 Flux Compactification
【著者】Hiroki Imai and Nobuhito Maru
【掲載URL】https://doi.org/10.1093/ptep/ptae070

用語解説

※1 左手型、右手型:素粒子は、鏡に映したときの性質が異なることが知られている。“鏡に映す前”の素粒子を「左手型」、“鏡に映した後”の素粒子を「右手型」と呼ぶ。

※2 ヒッグス場:質量生成をひき起こす宇宙を満たしている場。

※3 余剰次元空間:3次元以外は小さく丸まっていて見えないと考える、その空間のこと。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
教授 丸 信人(まる のぶひと)
TEL:06-6605-2539
E-mail:nmaru[at]omu.ac.jp

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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