最新の研究成果

-院外心肺停止患者の予後を迅速かつ高精度に予測- 新たな指標「R-EDByUSスコア」を開発

2024年6月18日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇病院外で起こる突然の心停止(院外心肺停止)患者の、蘇生後の予後を予測する指標を開発。
◇病院到着前の5つの情報で、救急搬送直後の高精度な予後予測が可能。 

概要

日本では年間約10万人を超える患者が院外心肺停止で救急搬送されますが、その中で心原生が疑われる場合でも、社会復帰率は10%以下と非常に低い現状があります。人工心肺補助装置などの高度治療は体への負担が大きいため、搬送時にできる限り正確な予後予測が望まれます。しかし、現在報告されている予後予測モデルでは、複雑な計算や採血データが必要なため、搬送直後に迅速かつ正確な予測を行うことは困難です。

大阪公立大学大学院医学研究科循環器内科学の島田 健晋病院講師、福田 大受教授、医療統計学の河合 稜太特任研究員、新谷 歩教授らの研究グループは、総務省消防庁が蓄積している蘇生状況の統計データの中から、病院到着前に得られる「年齢」、「心拍再開・病院到着までの時間」、「バイスタンダーCPRの有無」、「目撃の有無」、「初期波形」の5項目に着目。2005年から2019年に国内で救急搬送された18歳以上の院外心肺停止患者のうち、心臓が原因であると推定された942,891人のデータを用いて、新たな予後予測モデル「R-EDByUS(レッドバイアス)スコア」を開発しました。本モデルは、搬送直後に高精度な予後予測が可能なため、予後が良好と予測された患者に対して高度治療を行うための基準となり得ます。また、スマートフォンやタブレットからも簡単に使用できるため、日常診療での活用も期待されます。

本研究成果は、2024年5月31日に国際学術誌「Resuscitation」のオンライン速報版に掲載されました。

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院外心肺停止例に対する救急診療の現場では、経皮的人工心肺補助装置など非常に体に負担が大きい治療が必要となる場合がありますが、本当にその患者さんの予後改善に繋がるのか、医療者側も悩む場合があります。

本研究で構築した予測モデルを用いることで、神経学的予後が不良と予測される患者さんには身体への負担を強いることなく、また良好な予後が予測される方にはより重点的な医療資源の投入に繋がると考えています。

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島田 健晋病院講師

掲載誌情報

【発表雑誌】Resuscitation
【論文名】Neurological prognosis prediction upon arrival at the hospital after out-of-hospital cardiac arrest: R-EDByUS score
【著者】Takenobu Shimada, Ryota Kawai, Ayumi Shintani, Atsushi Shibata, Kenichiro Otsuka, Asahiro Ito, Takanori Yamazaki, Yasuhiro Izumiya, Daiju Fukuda, Naohiro Yonemoto, Yoshio Tahara, Takanori Ikeda, on behalf of the Japanese Circulation Society Resuscitation Science Study (JCS-ReSS) Group
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.resuscitation.2024.110257

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科 循環器内科学
病院講師 島田 健晋(しまだ たけのぶ)
TEL:06-6645-3801
E-mail:takeboyism[at]gmail.com
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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