最新の研究成果

結晶の形を自在にコントロール! 結晶性多孔質材料を用いた高品質薄膜の作製に成功

2024年7月16日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇結晶の成長方向に着目し、特定の方向にのみ成長するようコントロール。
◇一つの大きな結晶のような、MOF結晶の配向による高品質な薄膜の作製に成功。
◇高い透明性を必要とする、センサーや光学素子、ガス吸着シートへの応用に期待。

概要

金属有機構造体(MOF)は、小さな穴がたくさん開いた結晶構造を持つ物質です。その穴には分子やナノ材料を収納することができ、水素の貯蔵や二酸化炭素の吸収など、環境問題への貢献が期待される次世代材料として注目されています。MOF材料の高性能化には、単一の大きな結晶(単結晶)が必要ですが、1つの結晶サイズそのものを大きくすることは難しいため、結晶の向きを揃えて規則正しく並べることで、透明で高品質の配向薄膜の形成技術が求められています。

大阪公立大学大学院工学研究科の小関 友香大学院生(博士前期課程2年)、岡田 健司准教授、深津 亜里紗助教、髙橋 雅英教授らの研究グループは、これまでに開発したMOF結晶を規則正しく並べ、基板上に薄膜を形成する技術を応用し、MOF結晶の成長方向を制御しながら基板上に薄膜を形成。結晶を隙間なく綺麗に並べることで、これまでにない高品質な薄膜の作製に成功しました(図1)。また、本研究で作製した薄膜は無数の分子サイズの穴を持ち、光をよく通すため、分子吸着時の光学特性の変化を利用した光学センサーや光学素子、透明ガス吸着シートとしての活用も期待されます。

本研究成果は、2024年6月20日(木)に、英国の英国王立化学会が刊行する国際学術誌「Nanoscale」のオンライン速報版に掲載されました。

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図1 これまでの手法で合成したMOF膜(左)と今回開発した手法で合成したMOF膜(右)の比較。本手法で合成したMOF膜においては、OMU(Osaka Metropolitan University)の文字が鮮明に見えるほど透明性が高い。

多岐にわたる分野で応用が期待されているMOFという材料を用いて、表面が均一で光学的透明性の高い配向薄膜を作製することができました。初の論文執筆ということもあり、実験計画の立て方や英語での文章構成に苦労しましたが、先生方の丁寧なご指導のおかげでなんとか論文として形にすることができました。

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小関 友香大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Nanoscale
【論文名】Improved optical quality of heteroepitaxially grown metal–organic framework thin films by modulating the crystal growth
【著者】Yuka Koseki, Kenji Okada*, Shotaro Hashimoto, Shun Hirouchi, Arisa Fukatsu, Masahide Takahashi*
【掲載URL】https://doi.org/10.1039/D4NR01885K

資金情報

本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)(JPMJPR19I3)、科学研究費助成事業(科研費)基盤研究A(20H00401)、学術変革領域研究(A)超セラミックス(JP22H05142、JP22H05144) からの支援を受けて行われました。

参考情報

ビーカーの中の錬金術!!!有機‐無機ハイブリッド結晶が単結晶のような機能を発現! ―太陽電池などへの応用も期待できる新技術―(2021年6月29日 プレスリリース)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 岡田 健司(おかだ けんじ)
TEL:072-254-9748
E-mail:k_okada[at]omu.ac.jp

教授 髙橋 雅英(たかはし まさひで)
TEL:072-254-9309
E-mail:masa[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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