最新の研究成果

アルツハイマー病等の脳内で観察されるタウタンパク質の蓄積を検出する新しい抗体の樹立

2024年7月26日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇アルツハイマー病を含むタウオパチー(タウタンパク質の異常蓄積が引き起こす神経変性疾患)と総称される神経変性疾患の患者脳では、タウタンパク質が異常に集まり、大きな塊となって観察され(アルツハイマー病では神経原線維変化)、その前段階には小さな塊があると考えられ、それらを検出することは病態解析や診断のための新しいツールとなりえます。
◇研究チームは小さな塊の1つである顆粒状タウオリゴマーを免疫原として、新規ラットモノクローナル抗体を複数作製しました。それらの抗体の性状解析を行ったところ、2D6-2C6は小さな塊から大きな塊までの異常タウ凝集体を検出すること、また、アルツハイマー病患者の脳切片で観察される病理学特徴である神経原線維変化やプレタングル等を認識することがわかりました。
◇本研究における上記の成果は、タウオパチーの理解と診断の基礎的知見として重要な意義を持つと考えられます。

概要

大阪公立大学大学院工学研究科化学バイオ工学分野の立花太郎教授、学習院大学理学部生命科学科の添田義行助教、大学院生の小池力さん、高島明彦教授、滋賀医科大学神経難病研究センター橋渡し研究ユニットの石垣診祐教授らの研究グループは、タウタンパク質の異常凝集体の1つである顆粒状タウオリゴマーを免疫原として、腸骨リンパ節法※2を使用し新しいラットモノクローナル抗体を複数作製しました。これらの抗体のうち、「2D6-2C6」という抗体が非常に強くタウの異常凝集体に結合しました。さらに、2D6-2C6はヒトアルツハイマー病で観察される神経原線維変化やプレタングル等を認識することができました。このように、2D6-2C6抗体は、アルツハイマー病等で観察される異常なタウ凝集体を高感度に検出できるため、早期診断や新しい治療法の開発等の基礎的知見として寄与することが期待されます。

本研究成果は、2024726日にNature Publishing Group(英国)のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

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掲載誌情報

【発表雑誌】Scientific Reports
【論文名】A Novel Monoclonal Antibody Generated by Immunization with Granular Tau Oligomers Binds to Tau Aggregates at 423-430 Amino Acid Sequence
【著者】Yoshiyuki Soeda, Emi Hayashi, Naoko Nakatani, Shinsuke Ishigaki, Yuta Takaichi, Taro Tachibana, Yuichi Riku, James K. Chambers, Riki Koike, Moniruzzaman Mohammad, Akihiko Takashima
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41598-024-65949-7

資金情報

本研究は、科学研究費助成事業(Grant Number 20K06896および23K05993)、武田科学振興財団、安倍能成記念教育基金学術研究助成金およびAMEDの課題番号JP15km0908001の支援により実施されました。また、本発表は学習院大学グランドデザイン 2039「国際学術誌論文掲載補助事業」より掲載費の助成を受けています。

用語解説

1 神経原線維変化…神経原線維変化は、脳の神経細胞内でタウと呼ばれる微小管結合タンパク質が異常に凝集し、蓄積したものです。これは神経変性疾患の1つであるアルツハイマー病の病理学的特徴になっています。タウが異常蓄積する神経変性疾患はアルツハイマー病以外にもあり、それらはタウオパチーで総称されています。

2 腸骨リンパ節法…腸骨リンパ節法はモノクローナル抗体を得る方法の1つです。従来法と比べ、短期間で高効率に抗体産生できる点が利点です。

研究に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
教授 立花 太郎(たちばな たろう)
E-mail:taro-tachibana[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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