最新の研究成果

肥満の肺癌患者における治療法と死亡リスクの関係を大規模診療データから検証

2024年8月5日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇50万人超の肺癌患者データから、治療法と死亡リスクの関係に対する肥満の影響を検証。
◇肥満の患者は低BMIの患者に比べ、いずれの治療でも死亡リスクが低下。
◇肥満の患者へは、免疫療法が最適な治療法ではない可能性を示唆。 

概要

肥満は、生活習慣病やがんの発症リスクを増大させる一方で、抗がん剤治療時には死亡リスクの低下に関係することが知られており、これを「肥満のパラドックス」といいます。動物実験では、肥満の存在により免疫療法の効果が見込みにくいという報告がありますが、抗がん剤と免疫療法のどちらが最適かは明らかになっていません。

大阪公立大学大学院医学研究科医療統計学の井原 康貴大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科 博士課程4年)、今井 匠特任講師、新谷 歩教授、臨床腫瘍学の澤 兼士講師らの研究グループは、50万人以上の肺癌患者の診療報酬データから、2つの治療法(免疫療法/従来の抗がん剤治療法)と生存期間の関係に対する、ボディマス指数(BMI)の影響を検証しました。その結果、いずれの治療法でも、肥満の患者はBMIが低い患者に比べ死亡リスクが低いことが明らかになりました。

また、低BMI患者では従来の抗がん剤と比較して免疫療法を受けた場合に、死亡リスクが低下するのに対し、肥満の患者ではその傾向が見られないことも分かりました。本結果は、肥満の進行性非小細胞肺癌患者へは必ずしも免疫療法が最適な治療法ではないことを示唆しています。

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本研究成果は、2024年8月2日(金)に国際学術誌「JAMA Network Open」のオンライン速報版に掲載されました。

今後も患者さんに最適な治療法を提供できるように貢献したいと考えています。(井原)

レセプトなどのビッグデータを使った研究を今後も広めていきたいと思います。(新谷)

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(左)新谷教授、(右)井原大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】JAMA Network Open
【論文名】Immunotherapy and Overall Survival Among Patients With Advanced Non–Small Cell Lung Cancer and Obesity
【著者】Yasutaka Ihara, Kenji Sawa, Takumi Imai, Tsubasa Bito, Yuki Shimomura,  Ryota Kawai, Ayumi Shintani
【掲載URL】https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.25363

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科
教授 新谷 歩(しんたに あゆみ)
TEL:06-6645-3894
E-mail:ayumi.shintani[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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