最新の研究成果

―バイオマス由来の持続可能なプロピレン生産へ― 新たな触媒技術を開発

2024年9月6日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇グリセリン(廃油)から得られるアリルアルコールのC-O結合を選択的に水素化分解し、プロピレンを合成するための新しい触媒を開発。
◇バイオディーゼルの製造過程で副産物として生成されるグリセリンと再生可能エネルギーを利用したプロピレンの合成を可能に。

概要

プロピレンは石油から作られ、自動車のバンパーや食品の容器など、多くのプラスチックや化学製品の原料として広く利用されています。持続可能な社会の実現に向け、バイオマスを原料としたバイオプロピレンの生成が望まれています。

大阪公立大学大学院理学研究科の竹本 真准教授、松坂 裕之教授らの研究グループは、常温常圧に近い穏やかな条件下でバイオプロピレンを選択的に合成することができる触媒技術を新たに開発しました。この触媒を使用することで、バイオディーゼルの製造過程で副産物として生成されるグリセリンから、バイオプロピレンを効率よく合成することができるようになります。

本研究成果は、2024年8月6日に、国際学術誌「Chemical Communications」のオンライン速報版に掲載されました。

pr20240906_takemoto01

pr20240906_takemoto02

竹本 真准教授

この研究では、アリルアルコールを還元してプロピレンを合成する新触媒を提案しています。アリルアルコールは、バイオディーゼル製造時に副産物として得られるグリセリンから作られるため、このプロセスによりバイオマス由来のプロピレン生産が可能です。この技術は、持続可能な化学産業の発展に貢献し、環境に優しい資源利用を促進するものです。

掲載誌情報

【発表雑誌】Chemical Communications
【論文名】Bimetallic Ru–Ir/Rh complexes for catalytic allyl alcohol reduction to propylene
【著者】Kanade Kawaji, Mina Tsujiwaki, Ayaka Kiso, Yukina Kitajo, Manami Kitamura, Minako Nishimura, Junya Horikawa, Haruto Ikushima, Shin Takemoto, and Hiroyuki Matsuzaka

【掲載URL】
https://doi.org/10.1039/D4CC01711K

資金情報

本研究は、科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽) (課題番号: 22K19054)、基盤研究(C) (課題番号: 21K05088)、基盤研究(B) (課題番号:20H02758)、新学術領域研究 (課題番号: 18H04268)、公益財団法人 増屋記念基礎研究振興財団の支援の下で実施されました。

用語解説

※ 水素化分解:化学反応の一種で、分子内の特定の結合が水素と反応して分解されるプロセスを指す。通常、金属触媒の存在下で進行する。特に、有機分子中の炭素–炭素結合(C–C結合)や炭素–酸素結合(C–O結合)などを切断して、より小さな分子を得る反応に用いられる。例えば、石油精製プロセスにおいて、重質な炭化水素を軽質な炭化水素に分解するために使われ、ガソリンや軽油などの製品が生成される。また、特定の官能基を選択的に除去することも可能で、工業的にも研究にも広く利用されている。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
准教授:竹本 真(たけもと しん)
TEL:06-6605-7018
E-mail:stakemoto[a]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs09
  • SDGs17