最新の研究成果

-情報記録材料への応用も期待- 光や熱で制御可能なスイッチング分子を開発

2024年9月9日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇光だけでなく熱でも性質を変化させることが可能な分子を開発。
◇光または熱で情報を書き込み、光で情報を消去できる記録材料への応用も期待。
◇新たなスイッチング分子の開発に向けて、重要な知見を提供。

概要

光を当てると分子構造が可逆的に変化する光スイッチング分子は、色や屈折率、誘電率、磁性などのさまざまな物理化学的性質を、非接触に変化させることができるため、材料化学分野や生命科学分野などで幅広く研究が行われています。新しい光スイッチング分子の開発は、化学反応性や分子特性の基本原理に関する新たな知見をもたらすだけでなく、新しい材料設計戦略や応用の創出にもつながるため、重要な研究テーマの一つです。

大阪公立大学大学院工学研究科の濱谷 将太大学院生(博士後期課程3年)、北川 大地講師、小畠 誠也教授らの研究グループは、光スイッチング分子として知られている「ジアリールエテン」の分子構造を少し変化させた「アザジアリールエテン」が、従来の光スイッチング特性に加えて熱スイッチング特性を示すことを見出しました。さらに、光または熱によって情報を書き込み、光によって情報を消去することができる書き換え可能な記録媒体としても利用可能であることを明らかにしました(図1)。

本研究成果は、2024年8月28日(水)に、Wiley-VCHが刊行する国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン速報版に掲載されました。

press_0909図1 光と熱によるスイッチングを利用し、固体媒体中で書き込み/消去を行った様子

光によるスイッチングだけでなく、熱によっても着色、退色する分子の開発に成功しました。熱でもスイッチングするような分子の構造を設計し、期待に胸を躍らせながら合成していたことを覚えています。実際に、熱によって着色していく様子を観察できた時は、とても興奮しました。本研究で得られた成果は、学術的な知見に加え、新たな材料設計指針に繋がると考えています。

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濱谷 将太大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Angewandte Chemie International Edition (IF = 16.1)
【論文名】Aza-Diarylethenes Undergoing Both Photochemically and Thermally Reversible Electrocyclic Reactions
【著者】Shota Hamatani, Daichi Kitagawa,* and Seiya Kobatake*
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/anie.202414121

資金情報

本研究の一部は、JSPS科研費(JP22J21941、JP21KK0092、JP23K26619、JP24K01458、JP21H02016)および池谷科学技術振興財団の助成を受けて実施しました。

用語解説

※ スイッチング分子…外部刺激によって分子構造が可逆的に変化し、物理化学的性質をスイッチングする(切り替える)ことができる分子。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
講師 北川 大地(きたがわ だいち)
教授 小畠 誠也(こばたけ せいや)
TEL:06-6605-2798
E-mail:kitagawa[at]omu.ac.jp
              kobatake[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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