最新の研究成果

鏡よ鏡、私はライバルを攻撃しない方がいい? 魚は自分の大きさを鏡像で把握できる

2024年9月11日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇魚は鏡に映る自分の姿を見て体長を認識できることを実証。
◇魚もヒトと同じように、必要に応じて鏡を利用できることを示唆。
◇ヒトと動物が持つ自己意識※1の違いや、その進化を解明するうえで重要な研究成果。

概要

大阪公立大学大学院理学研究科の小林 大雅大学院生(博士後期課程3年)、幸田 正典特任教授、安房田 智司教授、十川 俊平特任研究員、ヌーシャテル大学(スイス)のRedouan Bshary教授らの研究グループは、魚が鏡に映る自分の姿を見て、自分の体長をより正確に認識できることを実証しました。

本研究では、ホンソメワケベラが鏡に映った自分の姿を自分であると認識した後、鏡像から把握した自分の体長を基準に、自分より大きいと判断したライバルに対する攻撃を減少させました。また、必要に応じて鏡を見に行くという動作により、鏡を利用して自分の体長を確認しているという可能性も示しました。本研究により、動物の自己意識はこれまで考えられてきたレベルよりヒトに近いものであることが判明しました。自己意識の進化過程の通説を見直す重要な契機となることが期待できます。

本研究成果は、2024年9月11日(水)、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

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図1. 水槽で鏡を見るホンソメワケベラ(左が鏡像)

実験動画

これまで、動物の行動の多くは本能や学習2によって説明されてきました。しかし本研究では、魚が鏡を必要に応じて意図して利用できる可能性を示しました。これからは動物が柔軟に物事を理解し、自由意志を持って行動するという可能性を念頭に置いて彼らと向き合っていく必要があるかもしれません。

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小林 大雅大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Scientific Reports
【論 文 名】Cleaner fish with mirror self-recognition capacity precisely realize their body size based on their mental image
【著  者】Taiga Kobayashi, Masanori Kohda, Satoshi Awata, Redouan Bshary, Shumpei Sogawa
【掲載URL】

https://doi.org/10.1038/s41598-024-70138-7

https://www.nature.com/articles/s41598-024-70138-7

資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費[23KJ1829(小林大雅)、19F19713、20K20630 (幸田正典)、22H02703(安房田智司)、20K20154(十川俊平)]、JST次世代研究者挑戦的研究プログラム[JPMJSP2139-RS22A026(小林大雅)]、2019年度大阪市立大学戦略的研究(幸田正典、安房田智司)、Swiss Science Foundation[310030_192673 (Redouan Bshary)]からの支援を受けて行われました。

用語解説

※1 自己意識:自分自身に注意を向けられる能力。姿や行動など自分の外見的な特徴に注目する外見的自己意識と、思考や感情、意図などの内面的な状態に焦点を当てる内面的自己意識に大別される。

※2 学習:原因と結果の関係の理解ではなく、条件付けによって個体の行動が半永久的に変化すること。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
特任研究員 十川 俊平(そがわ しゅんぺい)
TEL:06-6605-3170
E-mail:a10se013[at]yahoo.co.jp

教授 安房田 智司(あわた さとし)
TEL:06-6605-2607
E-mail:sa-awata[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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