最新の研究成果
認知症のない社会を目指して。漢方薬やハーブティーの素材に認知症予防や脳を若返らせる作用があることを発見
2024年9月19日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇漢方薬やハーブティーの素材から、独自の製法で認知症を予防する食材を3つ開発。
◇これらのうち1つは認知症を予防するだけでなく、脳の若返り作用も持つことを明らかに。
概要
大阪公立大学大学院医学研究科 老化・認知症制御学寄附講座の富山 貴美特任教授らの研究グループは、同氏が起業した大学発ベンチャー セレブロファーマ株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役:富山 貴美)や帝人株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役:内川 哲茂)などとの産学連携により、漢方薬やハーブティーの素材(図1)に、認知症を予防し脳を若返らせる作用があることを発見しました。
認知症は、異常なタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が変性することで発症します。神経細胞が死んだ後では、異常なタンパク質を取り除いても効果はないため、神経細胞が元気なうちから認知症を予防することが重要です。しかし、医薬品ではさまざまな条件をクリアする予防薬の開発が難しいため、本研究では食品に着目し、ハーブティーの素材であるママキ葉(成果①)や、漢方薬の素材である石菖(成果②)や酸棗仁(成果③)から、独自の方法で試料を調製しました。これらの試料を認知症モデルマウスや正常老齢マウスに1カ月間経口投与したところ、認知症モデルマウスの病理が改善され、認知機能や運動機能も回復しました。さらに酸棗仁は、老齢マウスの細胞老化を抑え、若いマウスと同レベルにまで認知機能を向上させました。これらの食材・製法を用いることで、中高齢者が自らの判断で購入・服用できる認知症予防食品の開発が可能となり、認知症の克服に役立つものと考えられます。
成果①は2023年10月2日(月)に国際学術誌「GeroScience」に、成果②は2024年5月23日(木)に国際学術誌「Nutrients」に、成果③は2024年9月13日(金)に国際学術誌「eLife」に、それぞれオンライン掲載されました。
図1 ママキ葉(左)、石菖葉(中)、酸棗仁(右)
本研究は大学での研究成果をもとに、大学発ベンチャーを中心とする研究グループによって行われました。本研究で開発した食材は、認知症を予防するばかりでなく脳の老化を抑える働きも持っています。これらの食品で認知症ゼロ社会を目指します。
富山 貴美特任教授
掲載誌情報①
【発表雑誌】GeroScience
【論文名】Hawaiian native herb Mamaki prevents dementia in four different mouse models of neurodegenerative diseases
【著者】Tomohiro Umeda, Keiko Shigemori, Rumi Uekado, Kazunori Matsuda, Takami Tomiyama
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s11357-023-00950-y
掲載誌情報②
【発表雑誌】Nutrients
【論文名】New Value of Acorus tatarinowii/gramineus Leaves as a Dietary Source for Dementia Prevention
【著者】Tomohiro Umeda, Ayumi Sakai, Keiko Shigemori, Kunio Nakata, Ryota Nakajima, Kei Yamana, Takami Tomiyama【掲載URL】https://doi.org/10.3390/nu16111589
掲載誌情報③
【発表雑誌】eLife
【論文名】Simply crushed Zizyphi spinosi semen prevents neurodegenerative diseases and reverses age-related cognitive decline in mice
【著者】Tomohiro Umeda, Ayumi Sakai, Rumi Uekado, Keiko Shigemori, Ryota Nakajima, Kei Yamana, Takami Tomiyama
【掲載URL】https://doi.org/10.7554/eLife.100737.1
資金情報
本研究は、セレブロファーマ株式会社、帝人株式会社の研究助成を受けて行われました
研究内容に関する問合せ先
大阪公立大学大学院医学研究科
老化・認知症制御学寄附講座
特任教授 富山 貴美(とみやま たかみ)
TEL:06-6645-3922
E-mail:gr-med-neurosci[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs