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プラズマ照射で腱骨連結部の治癒を早め強度を向上 - 医工連携で挑む次世代型再生医療 -

2024年9月20日

  • 工学研究科
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ポイント

◇腱板断裂1モデルをウサギで作製し、プラズマを腱骨連結部の修復部に直接照射。
◇プラズマ照射による腱骨連結部の治療を、生体力学的・組織学的観点から多角的に評価。

概要

腱骨連結部は腱と骨をつなぐ部位のことで、サッカー選手によくみられる膝の前十字靭帯損傷や、メジャーリーガー投手の手術で話題の肘の内側側副靭帯損傷などは、この腱骨連結部で生じます。また、腱骨連結部の代表的な損傷である肩腱板断裂は、日本の50歳以上の約4人に1人が罹患し、手術を受けても約20%の再断裂が起きるという報告もあります。

大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の中澤 克優大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科 博士課程4年)、豊田 宏光准教授、中村 博亮教授(研究当時)、同大学院工学研究科 医工・生命工学教育研究センターの呉 準席教授らの共同研究グループは、腱骨連結部損傷の修復を促進する治療法として、低温大気圧プラズマに注目。腱板断裂ウサギモデルを作製し、低温大気圧プラズマを生体に直接照射しました。その結果、プラズマ照射した群は、照射していない群(コントロール群)と比べて腱骨連結部の治癒が早まり、強度が向上していることが確認できました。現在行われている腱板の治療と組み合わせることで、より確実な腱骨連結部の修復や治療期間短縮への貢献が期待できます。

本研究成果は、国際科学誌「Journal of shoulder and elbow surgery」に2024年9月17日にオンライン掲載されました。

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図1:ウサギ腱板断裂モデルへの低温大気圧プラズマ照射
①筋肉(腱板)が元々付いていた部分に骨孔を作成し、ペンシルタイプの装置により低温大気圧プラズマを照射。
②腱板(棘下筋)を縫合糸で縫合。

スポーツ選手に多い靭帯損傷や中高年に多い肩腱板断裂は、手術がうまくいっても術後のリハビリに時間がかかってしまいます。まだ動物実験のレベルですが、低温大気圧プラズマを活用した治療法がこの問題を解決することにつながれば、多くの患者さんにとって希望ある選択肢になると期待しています。

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(左より)豊田准教授、中澤大学院生、呉教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of shoulder and elbow surgery
【論 文 名】Non-thermal atmospheric pressure gas discharge plasma enhances tendon-to-bone junction repair in a rabbit model
【著  者】Katsumasa Nakazawa, Hiromitsu Toyoda, Tomoya Manaka, Kumi Orita, Yoshihiro Hirakawa, Yoichi Ito , Kosuke Saito, Ryosuke Iio, Yoshitaka Ban, Hana Yao, Yuto Kobayashi, Jun-Seok Oh, Tatsuru Shirafuji, Hiroaki Nakamura

【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.jse.2024.07.039

用語解説

※1  腱板断裂:上腕の骨と肩甲骨をつなぐ腱が切れてしまい、肩の痛みや筋力の低下を引き起こす疾患のこと。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 医学研究科
准教授:豊田 宏光(とよだ ひろみつ)
TEL:06-6645-3851
E-mail:h-toyoda[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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