最新の研究成果
細菌のエネルギー産生機能を抑制! カンピロバクター属細菌に特異的に働く抗体を発見
2024年9月25日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇食中毒原因菌「カンピロバクター※1・ジェジュニ」に特異的に結合する抗体を発見し、細菌のエネルギー産生に関わるタンパク質の働きを阻害することが明らかに。
◇カンピロバクター属細菌に対する新規ワクチン開発への貢献に期待。
概要
カンピロバクター属細菌による食中毒は、加熱不十分な肉や細菌を含んだ水などの摂取で引き起こされます。カンピロバクター属細菌は日本における食中毒の原因菌の上位を占めており、海外では死亡例も伴う全身感染症に発展する例も多数報告されています。未だに有効な制御法がなく、ワクチンなど制御法の開発が求められています。
大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センターの山﨑 伸二教授、畑中 律敏准教授らと、医薬基盤・健康・栄養研究所の國澤 純副所長らの研究グループは、カンピロバクター属細菌による胃腸炎の原因菌の大部分を占めるカンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni)に着目し、C. jejuniに特異的に結合する抗体を見出しました。またこの抗体は、C. jejuniのエネルギー産生に関わるタンパク質(QcrC※2)を抗原として認識しており、抗体が結合することでエネルギー産生機能が停止し、C. jejuniの増殖抑制や病原性低下に繋がることが明らかになりました。本研究成果は、カンピロバクター属細菌に対する新規ワクチン開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2024年7月2日(火)に国際学術誌「Frontiers in Microbiology」にオンライン掲載されました。
図 カンピロバクター・ジェジュニの顕微鏡画像
QcrCがカンピロバクター・ジェジュニの病原性に重要な役割を果たしていること、このタンパク質が本菌種に特異的に反応すること、ワクチン抗原となる可能性を、医薬基盤・健康・栄養研の國澤博士らの研究グループと見出しました。この成果が、カンピロバクター感染症の制御に役立つことを期待しています。
(左)山﨑教授、(右)畑中准教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Frontiers in Microbiology
【論文名】QcrC is a potential target for antibody therapy and vaccination to control Campylobacter jejuni infection by suppressing its energy metabolism
【著者】Koji Hosomi, Noritoshi Hatanaka, Atsushi Hinenoya, Jun Adachi, Yoko Tojima, Mari Furuta, Keita Uchiyama, Makiko Morita, Takahiro Nagatake, Azusa Saika, Soichiro Kawai, Ken Yoshii, Saki Kondo, Shinji Yamasaki and Jun Kunisawa
【掲載URL】https://doi.org/10.3389/fmicb.2024.1415893
資金情報
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業による研究費の支援のもと行われました。
用語解説
※1 カンピロバクター…鶏などの家畜の腸管内に生息する細菌で、ヒトに胃腸炎や敗血症などの病気の原因となる、らせん状の形態の細菌。
※2 QcrC…メナキノールシトクロムCレダクターゼ複合体で、エネルギー産生に関わる膜タンパク質。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院獣医学研究科/
大阪国際感染症研究センター
准教授 畑中 律敏(はたなか のりとし)
TEL:072-463-5676
E-mail:n.hatanaka[at]omu.ac.jp
教授 山﨑 伸二(やまさき しんじ)
TEL:072-463-5653
E-mail:yshinji[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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