最新の研究成果

藻×酵母の組み合わせが最適! 光合成を利用した排水処理の効率向上へ

2024年10月1日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇排水処理効率が最も高くなる、微細藻類1と従属栄養微生物2の組み合わせを検討。
◇緑藻と酵母の組み合わせにより排水処理効率が向上することを実証。
◇排水処理効率が向上した要因を、緑藻と酵母の全遺伝子発現解析で明らかに。 

概要

近年、省エネルギーな排水処理法として、光合成を行う微細藻類を用いる方法が注目されています。微細藻類は二酸化炭素が少ない環境では増殖スピードが落ちてしまいます。そのため、二酸化炭素を排出する従属栄養微生物を共に培養することで増殖力を高め、排水処理効率の向上を目指す研究が進んでいます。

大阪公立大学大学院工学研究科の高橋 美郁大学院生(博士前期課程1年)、山田 亮祐准教授らの研究グループは、排水処理に利用されることの多い3種類の微細藻類と5種類の従属栄養微生物を用いて、排水処理効率が最も高くなる組み合わせを検討しました。模擬排水を用いた実験の結果、緑藻と酵母の組み合わせが、最も高い排水処理効率を示すことが分かりました。また、緑藻と酵母の全遺伝子発現解析の結果、排水に含まれる汚染物質の取り込みに関する遺伝子の発現量の増加が、排水処理効率の向上に寄与することが明らかになりました。

本研究成果は、2024年9月18日(水)に国際学術誌「Applied Microbiology and Biotechnology」のオンライン速報版に掲載されました。

press_1001図 緑藻と酵母の共培養系
緑藻と酵母は互いに酸素、二酸化炭素、および各種化合物を授受することで、互いの増殖能を高めあう。

排水処理に用いる微生物の組み合わせを検討することによって、処理効率を向上させることに成功しました。条件によっては微生物が死滅してしまう場合もあり、苦労しましたが、成功したときは達成感を得ることができました。この研究は排水処理効率向上による電力消費削減から地球温暖化対策に繋がると考えています。

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高橋 美郁大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Applied Microbiology and Biotechnology
【論文名】Co-utilization of microalgae and heterotrophic microorganisms improves wastewater treatment efficiency
【著者】Miiku Takahashi, Yukino Karitani, Ryosuke Yamada, Takuya Matsumoto & Hiroyasu Ogino
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s00253-024-13309-w

資金情報

本研究の一部は、JSPS科研費(JP22H03803)の助成を受けて実施しました。

用語解説

※1 微細藻類…植物のように、光合成により、光をエネルギー源として水と二酸化炭素から酸素と有機物を生成する微生物。

※2 従属栄養微生物…外部から有機物を取り込み、それをエネルギー源や炭素源として成長する微生物。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 山田 亮祐(やまだ りょうすけ)
TEL:072-254-9504
E-mail:ryamada[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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