最新の研究成果

-全固体ナトリウム電池の実現へ- 実用化レベルの室温導電率を示す塩化物固体電解質を開発

2024年10月2日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇全固体ナトリウム電池を実現するための鍵となる、新たな塩化物固体電解質を開発。
◇この塩化物固体電解質は、ナノサイズの結晶が塩化物系非晶質中に分散した構造を持つ。
◇既存の塩化物固体電解質と比較し、電極との副反応が起こりにくく、室温で実用化レベルの導電率を達成。

概要

全固体電池に用いる固体電解質には、高いイオン伝導性を持つことや、正極・負極の活物質と副反応が生じないことが求められます。これまで、硫化物や酸化物を用いた固体電解質の研究が世界中で進められてきましたが、近年では酸化耐性の高い塩化物についても物質探索研究が活発に行われています。

大阪公立大学大学院工学研究科の本橋 宏大助教、塚崎 裕文氏(当時 特任准教授)、作田 敦准教授、森 茂生教授、林 晃敏教授の研究グループは、これまでに開発した塩化物固体電解質NaTaCl6に添加物Ta2O5を加えることで、室温で10–3 S cm–1を超える導電率を実現しました(図)。

また、この固体電解質は従来のものと比べて、電極活物質との副反応が生じにくく、耐久性などの機械的特性も優れていることが明らかになりました。

本研究成果は、2024年9月24日(火)に国際学術誌「Chemistry of Materials」のオンライン速報版に掲載されました。

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図 塩化物固体電解質における導電率の温度依存性

塩化物固体電解質は、2018年から論文報告数や特許件数が爆発的に増えており、硫化物や酸化物と同様に固体電解質開発の中心となっています。この状況に対して、本研究ではマイルストーンとなる高機能性の複合体固体電解質を開発しました。引き続き、塩化物複合固体電解質の開発を進めて、日本のプレゼンスを世界に示していきたいと思います。

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本橋 宏大助教

掲載誌情報

【発表雑誌】Chemistry of Materials
【論文名】Fast Sodium-Ion Conducting Amorphous Oxychloride Embedding Nanoparticles
【著者】Kota Motohashi, Hirofumi Tsukasaki, Shigeo Mori, Atsushi Sakuda, and Akitoshi Hayashi*
【掲載URL】https://doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c02104

資金情報等

本研究は、再生可能エネルギー最大導入に向けた電気化学材料研究拠点(DX-GEM、JPMXP1122712807)および科学研究費補助金(JP24H02204, JP21H04701, JP19H05816)の支援を受けて実施しました。また、XAFS測定は佐賀県立北九州シンクロトロン光研究センターのBL11にて実施されました(no. 152-2302127T)。

関連情報

ACS Mater. Lett., 6 (2024) 1178. (NaTaCl6: Chloride as the End-Member of Sodium-Ion Conductors)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
助教 本橋 宏大(もとはし こうた)
TEL:072-254-9333
E-mail:kota.motohashi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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