最新の研究成果
食中毒の原因となるプロビデンシア属細菌の新たな病原遺伝子を特定
2024年10月2日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇プロビデンシア属細菌※1の全ゲノム解析から、下痢症状の原因となる病原遺伝子を特定。
◇この病原遺伝子は、細菌細胞内の環状DNA分子上に存在し、別の病原遺伝子と共に細菌間に伝播する可能性を明らかに。
概要
プロビデンシア属細菌は、O-157やサルモネラなどと同様に、重篤な食中毒症状を引き起こす原因菌として注目されています。しかし、感染源や感染経路には不明な点も多く、その解明や予防法の確立が求められています。
大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センターの山﨑 伸二教授、Jayedul Hassan氏(当時 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科博士課程)らの研究グループは、これまでの研究でプロビデンシア属細菌の一つであるプロビデンシア・ルスティガニ(P. rustigianii)は、細菌の細胞内にある染色体とは異なる環状DNA分子(プラスミド※2)上に、細胞膨化致死毒素※3と呼ばれる病原遺伝子を持っていることを報告していました。しかし、この病原遺伝子を排除した場合でも菌の病原性が低下しなかったことから、本研究ではP. rustigianiiの全ゲノム解析を実施。その結果、プラスミド上には3型分泌装置※4と呼ばれる、細菌の病原性維持に関わる別の病原遺伝子が存在していることを特定しました。また、この遺伝子はサルモネラが保有する3型分泌装置と類似しており、細胞膨化致死毒素とともに、同種・他菌種の細菌に伝播する可能性があることも明らかになりました。
本研究成果は、2024年9月9日に国際学術誌「mBio」にオンライン掲載されました。
図 P. rustigianiiのプラスミド上にある細胞膨化致死毒素と3型分泌装置
プロビデンシア属細菌は、母国バングラデシュなどの開発途上国においても、下痢症の原因菌として問題になっています。しかし、その病原性については全く明らかになっていませんでした。今回の発見は母国への貢献にも繋がり、大変嬉しく思っています。今後も、プロビデンシア属細菌による感染症の制御に向けて、さらなる研究に取り組みます。
(左)Jayedul Hassan氏、(右)山﨑 伸二教授
掲載誌情報
【発表雑誌】mBio
【論文名】A plasmid mediated type three secretion system associated with invasiveness and diarrheagenicity of Providencia rustigianii
【著者】Jayedul Hassan, Atsushi Hinenoya, Noritoshi Hatanaka, Sharda Prasad Awasthi, Goutham Belagula Manjunath, Nahid Rahman, Jyoji Yamate, Shota Nakamura, Akira Nagita, Daisuke Motooka, Shah M Faruque and Shinji Yamasaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1128/mbio.02297-24
資金情報
本研究は、JSPS科研費(20K07483)、厚生労働科学研究費補助金(JPMH23KA1003)の支援を受けて実施しました。
用語解説
※1 プロビデンシア属細菌…大腸菌やサルモネラなどと同じく、細菌の分類学上、腸内細菌目に属する細菌。
※2 プラスミド…細菌の染色体DNAとは別に、生命活動に必須でない(病原因子や薬剤耐性)遺伝子を保持している。菌種間を伝播する能力を有するものと有しないものがある。
※3 細胞膨化致死毒素…細胞を膨化させた後、さらに細胞を致死させるタンパク毒素。
※4 3型分泌装置…タンパク質分泌装置の1つ。菌体表面から突出した針様の構造体で、細菌内で作られたタンパク質を宿主細胞内に打ち込むことで病原性を発揮する。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院獣医学研究科/
大阪国際感染症研究センター
教授 山﨑 伸二(やまさき しんじ)
TEL:072-463-5653
E-mail:yshinji[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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