最新の研究成果

有機半導体材料の利用でスピン流の新たな特性を発見

2024年10月22日

  • 理学研究科
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  • プレスリリース

ポイント

◇強磁性層と非磁性層の界面におけるスピン流の特性を調査。
◇非磁性層に有機半導体材料を採用し、非磁性層側からのスピン流効果の観測に成功。
◇強磁性共鳴(FMR)信号の線幅が狭まるという、通説を覆す結果に。

概要

物質中の磁気の流れであるスピン流は、電流に似た働きをするため、次世代情報通信機器の低消費電力化を目指す技術として研究が進んでいます。特に、強磁性層と非磁性層の界面におけるスピン流の発生と伝達は、スピントロニクスの研究において重要なテーマとされています。

大阪公立大学理学研究科の鐘本 勝一教授、髙石 晃平氏(研究当時、大学院生)、堤 晴香氏(研究当時、大学院生)らの研究グループは、強磁性層と、非磁性層として有機半導体材料を使用した積層デバイスを構築。これまでは確認ができなかった非磁性層側からの、スピン流効果の観測に成功しました。また、スピン流が生成される際、強磁性層におけるFMR信号の線幅は、これまでの研究では元の線幅に比べて広がると考えられていましたが、本研究ではFMR信号の線幅が狭まるという結果を得ました。本研究結果は、スピン流の特性の理解に重要な知見を与えることが期待できます。

本研究成果は、2024年8月2日に国際学術誌「Advanced Electronic Materials」にオンライン公開されました。

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図 積層デバイスの界面におけるスピン流効果の観測

鐘本 勝一教授のコメント>

線幅が減少する実験結果は当初信じられず、幾度となく実験を重ね、理論的考察を経た結果、従来の理屈が万全ではないとの結論に至りました。特に、その実証に向けて、緻密かつ多くの実験を加えた苦労の末、今回の成果を得ることができました。

用語解説

※ スピントロニクス:電子の“スピン”という特性を利用した技術のこと。従来のエレクトロニクスは、電子の「電荷」によって情報を処理するが、スピントロニクスでは電子がもつ小さな磁石のような性質(スピン)を活用する。これにより、従来よりも高効率で高速なデータ処理が可能となり、コンピューターの記憶装置やエネルギー効率の改善に役立つ次世代技術として注目されている。

掲載誌情報

【発表雑誌】Advanced Electronic Materials
【論 文 名】Spin Current Generation at The Hybrid Ferromagnetic Metal/ Organic Semiconductor Interface as Revealed by Multiple Magnetic Resonance Techniques
【著  者】Kohei Takaishi, Haruka Tsutsumi, Hideto Matsuoka, Takayuki Suzuki, Katsuichi Kanemoto* (* 責任著者)

【掲載URL】https://doi.org/10.1002/aelm.202400322

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科・南部陽一郎物理学研究所
教授 鐘本 勝一(かねもと かついち)
TEL:06-6605-2550
E-mail:kkane[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

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