最新の研究成果

-輸送体を運搬する新たなタンパク質を発見- 栄養素の輸送体が細胞内を移動する仕組みを明らかに

2024年10月30日

  • 農学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇ホウ素の輸送体「ホウ酸チャネル」が、細胞内でどのように運ばれるのかを検証。
◇特定のタンパク質が、ホウ酸チャネルの細胞膜への移動を手助けすることが判明。

概要

植物の細胞は、輸送体によって栄養素を取り込みます。栄養素の一つであるホウ素は、細胞膜に存在する輸送体「ホウ酸チャネル」によって細胞外から細胞内に取り込まれます。しかし、ホウ酸チャネルがどのように細胞膜まで運ばれるのか、その仕組みは明らかになっていませんでした。

大阪公立大学大学院農学研究科の髙野 順平教授、張 哲氏と、名古屋大学大学院生命農学研究科の石黒 澄衞准教授らの研究グループは、ホウ酸チャネルが細胞膜まで正しく運ばれないシロイヌナズナの変異株を見つけ出し、その原因が、KAONASHI3と呼ばれるタンパク質の欠損によることを突き止めました。またこのタンパク質は、似た性質を持つ2つのタンパク質と共に、ホウ酸チャネルの細胞膜への移動を手助けするカーゴレセプター1として働く可能性が高いことを示しました(図1)。

本研究成果は、2024年10月30日に国際学術誌「Journal of Experimental Botany」のオンライン速報版に掲載されました。

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図1 ホウ酸チャネルの小胞体から細胞膜までの輸送モデル
KNS3-KNSTH1-KNSTH2複合体がカーゴレセプターとして働き、ホウ酸チャネルの輸送を手助けする。

植物細胞において、ホウ酸チャネルの細胞膜輸送に関わる、3つの重要なタンパク質を見つけました。また、これら3つのタンパク質が、花粉の表面構造にも影響を与えることに加え、複合体を形成して機能する可能性が明らかになり、驚きました。本成果が、植物における膜タンパク質の交通メカニズムの解明に役に立つことを期待しています。

Zhe Zhang

張 哲氏

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Experimental Botany
【論文名】Arabidopsis KNS3 and its two homologs mediate endoplasmic reticulum-to-plasma membrane traffic of boric acid channels
【著者】Zhe Zhang, Shunsuke Nakamura, Arisa Yamasaki, Masataka Uehara, Shunsuke Takemura, Kohei Tsuchida, Takehiro Kamiya, Shuji Shigenobu, Katsushi Yamaguchi, Toru Fujiwara, Sumie Ishiguro, Junpei Takano
【掲載URL】https://doi.org/10.1093/jxb/erae380

資金情報

本研究は、JSPS科研費(16K15082、19H05763、19H00934、19H05637)、最先端・次世代研究開発支援プログラム(GS001)からの支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 カーゴレセプター…カーゴ(積荷)となるタンパク質と結合し、輸送小胞に積み込まれて次の膜区画に輸送されるタンパク質。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院農学研究科
教授 髙野 順平(たかの じゅんぺい)
TEL:072-254-9406
E-mail:jtakano[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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