最新の研究成果
血糖管理を行う2型糖尿病治療薬が腎臓の酸素状態を改善していることを明らかに!
2024年10月30日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇糖尿病関連腎臓病の治療薬として推奨されるSGLT2阻害薬の腎臓保護作用を評価。
◇非侵襲的に酸素濃度を計測できるBOLD MRI※を用いて、腎臓の酸素量を可視化。
◇SGLT2阻害薬は腎臓の酸欠状態を防ぎ、腎臓を守る可能性がある。
概要
腎臓病は悪化すると透析治療が必要になります。日本では、透析治療を受けている患者は35万人に上り、医療費は年間約1.6兆円と総医療費の約4%を占めます。糖尿病による腎臓病(糖尿病関連腎臓病)は、透析の原因疾患の第一位で、近年、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が、血糖値改善作用を上回る透析予防効果を発揮し注目されています。しかし、その作用機序には不明な部分も多く、その解明が求められています。
大阪公立大学大学院医学研究科腎臓病態内科学の森 克仁准教授と埼玉医科大学医学部腎臓内科の井上 勉教授らの共同研究グループは、SGLT2阻害薬の作用機序を調べるために腎臓の酸素量に着目。2型糖尿病患者14人へSGLT2阻害薬を5日間投与し、投与から1日目と5日目の腎臓の酸素量を、BOLD MRI(Blood oxygenation level-dependent MRI)を用いて調べました。その結果、投与前に比べて酸素量が向上したことから、SGLT2阻害薬は腎臓の酸素状態を改善し、腎臓を保護する可能性が示されました。
本研究成果は、2024年8月30日(金)に国際学術誌「Frontiers in Endocrinology」のオンライン速報版に掲載されました。
図 BOLD MRIによる腎臓の酸素量の測定例
腎臓の赤い方が酸素量が多く、青い方が酸素量が少ないことを示す。
ヒトで腎臓の酸素量を評価することは極めて困難でした。今回、まだ世界でも限られた施設でしか評価できないBOLD MRIを用いて、SGLT2阻害薬の酸素化改善、腎保護の機序の一端を示すことができました。多くの関係者のご支援、ご協力のお陰で感謝の気持ちでいっぱいです。今後、BOLD MRIにより腎臓病の診断、治療が大きく発展するかもしれません。
森 克仁准教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Frontiers in Endocrinology
【論文名】Effects of canagliflozin on kidney oxygenation evaluated using blood oxygenation level-dependent MRI in patients with type 2 diabetes
【著者】Katsuhito Mori*, Tsutomu Inoue, Yuri Machiba, Hideki Uedono, Shinya Nakatani, Masahiro Ishikawa, Satsuki Taniuchi, Yutaka Katayama, Akira Yamamoto, Naoki Kobayashi, Eito Kozawa, Taro Shimono, Yukio Miki, Hirokazu Okada and Masanori Emoto}
【掲載URL】https://doi.org/10.3389/fendo.2024.1451671
資金情報
本研究は、田辺三菱製薬より資金援助を受け、実施されました。
用語解説
※ BOLD MRI…機能的MRIのひとつ。ヘモグロビン (Hb)には酸素が結合した酸化型Hbと還元型Hbが存在するが、両者には磁化率の違いがあるため、MR信号(特にT2*)に差が生じる(BOLD効果)。BOLD MRIは、酸素化が改善すると酸化型Hbが増加しT2*値が上昇することを利用し、組織・臓器の酸素化を評価できる。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
准教授 森 克仁(もり かつひと)
TEL:06-6645-3806
E-mail:ktmori[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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