最新の研究成果

-世界的な水不足の解消に向けて- 空気中の水蒸気を効率良く吸収・放出する吸湿剤を開発

2024年11月7日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇医薬品や洗剤、化粧品などに使用される汎用的な2種類の高分子をランダムに繋ぎ合わせた吸湿剤により、水蒸気の効率的な吸収・放出が可能に。
◇35℃という低温で、吸収した水を取り出すことに成功。

概要

人口の爆発的な増加や地球温暖化により、各地で水不足が深刻化しています。約14億km3ある地球上の水のうち、海水が約97.5%を占めているため、海水を生活水に浄化する技術も発達していますが、海のない内陸地では活用できないことも課題です。

大阪公立大学大学院工学研究科の池川 大輔大学院生(当時 博士前期課程2年)、深津 亜里紗助教、岡田 健司准教授、髙橋 雅英教授らの研究グループは、利用可能な水資源の10%を占めるといわれる水蒸気に着目。水をよく吸収するポリエチレングリコールに、それよりやや水を吸収しにくいポリプロピレングリコールをランダムに繋ぎ合わせることで、空気中の水蒸気を効率良く吸収・放出できる吸湿剤を開発しました。これまでは水の吸収性能に着目した開発が行われてきましたが、本研究では水の放出性能を高めることで、吸収・放出の高効率化を実現しました。また、従来の吸湿剤では、吸収した水の取り出しに約100℃まで加熱する必要がありましたが、本吸湿剤は35℃で取り出すことができます。今後は、本吸湿剤をデバイス化することで、砂漠などの乾燥地域でも効率よく水資源の回収が可能となることが期待されます。

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本研究成果は、2024年10月29日に国際学術誌「ACS ES&T Water」のオンライン速報版に掲載されました。

化粧品等に用いられるポリエチレングリコールを用いて、従来よりもエネルギー効率の高い水脱着メカニズムを見出すことができ、大変嬉しく思います。今回見出したメカニズムが実用化され、水問題の解決に役立つことを願います。

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池川 大輔大学院生

従来の吸湿剤は、水分を大量に取り込むものの取り出すのが難しいという点が課題でした。本研究では吸湿剤にやや疎水的な成分を導入し、適切な親水性を持たせることで、効率よく水を回収できる条件を見出しました。本研究を足がかりに、更なる水の回収効率向上に向けて材料開発を進めてまいります。

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深津 亜里紗助教

掲載誌情報

【発表雑誌】ACS ES&T Water
【論文名】Liquid Polyether-Based Water Harvester for Near Ambient Temperature Operation via Hydrophilicity-Difference-Induced Water Transfer
【著者】Daisuke Ikegawa, Arisa Fukatsu*, Kenji Okada, Masahide Takahashi*
【掲載URL】https://doi.org/10.1021/acsestwater.4c00775

資金情報

本研究は、JSPS科研費 基盤研究(A)(JP20H00401)、若手研究(JP22K14492、JP24K17511)、泉科学技術振興財団、関西エネルギー・リサイクル科学研究振興財団、日本板硝子材料工学助成会、小笠原敏晶記念財団の支援を受けて行われました。

関連情報

Daisuke Ikegawa, Arisa Fukatsu*, Kenji Okada, Masahide Takahashi*,  "Accelerated Water Desorption of Oligomeric Poly(ethylene glycol) by Addition of Poly(propylene glycol) for Energy-Efficient Water Recovery Systems"  ACS Omega, 9, 1084-1091 (2024) 
DOI: https://doi.org/10.1021/acsomega.3c07310 

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
教授 髙橋 雅英(たかはし まさひで)
TEL:072-254-9309
E-mail:masa[at]omu.ac.jp

助教 深津 亜里紗(ふかつ ありさ)
TEL:072-254-9812
E-mail:fukatsu[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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