最新の研究成果

~再エネの一つ、地中熱の長期安定利用を目指して~ 地下水の水質監視の重要性を提唱

2024年11月8日

  • 研究推進機構
  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇再生可能エネルギーである地中熱1を熱源とした帯水層蓄熱(ATES)システム2の長期安定利用を目指した研究。
◇ATESシステムにおいて地下水の継続的な水質監視が重要であることを示唆。

概要

帯水層蓄熱(ATES)システムは、省エネルギーやカーボンニュートラルの実現に貢献できる技術の一つとして期待されています。このシステムは、地下水を熱媒体として熱を地下の帯水層に蓄え、その熱を季節に応じて適宜取り出して建物の冷暖房を効率的に行います。ヨーロッパを中心に利用が進んでおり、日本でも導入の拡大が望まれています。

大阪公立大学都市科学・防災研究センター 益田 晴恵特任教授、中曽 康壽特任研究員、中尾 正喜特任教授、崔 林日氏(2024年 大阪市立大学大学院工学研究科 後期博士課程修了)らの研究グループは、大阪市内にあるATESシステム使用施設において、地下水を利用する際に発生した井戸の目詰まりについて発生場所と原因を特定しました。また、長期間にわたってシステムを安全に利用するために、井戸の使用開始前から水質を調査し、継続的に水質を監視することが有効であることを示しました。本研究結果は、再生可能エネルギー技術の向上に貢献することが期待できます。

本研究成果は、国際学術誌「Geothermics」に2024年10月28日にオンライン公開されました。

pr202411_masuda01

帯水層蓄熱システムで冬季に温熱を利用するイメージ

東日本大震災の後に、宮城県と福島県で地下水調査をした時から、地球化学者として原子力に頼らない社会の実現に関わりたいと考えていました。今、地下水を用いた再生可能エネルギーの技術開発に関われることに意義を感じています。この論文はその最初の成果です。今後も成果を発信し続けたいと思います。

pr20241108_masuda

益田 晴恵特任教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Geothermics
【論 文 名】Natural recovery from Fe-oxyhydroxide clogging of a geothermal well in Osaka, Japan
【著  者】Harue Masuda⁎, Yasuhisa Nakaso, Masaki Nakao, Linri Cui (*責任著者)
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.geothermics.2024.103187

用語解説

※1 地中熱:
地表から約10~数百メートル地下においては、自然状態で地表の温度変化を受けず年間を通して一定の地温を示す。一定温度であることを利用する以外に、地中を加熱・冷却し熱を貯めて利用する方法もあり、主に冷暖房や冬期の融雪等に用いられる。

※2 帯水層蓄熱(ATES : Aquifer Thermal Energy Storage)システム:
地中熱を利用するシステムの一つ。地下水帯水層に温熱・冷熱を貯留し、温熱は冬季に、冷熱は夏季に用いることで、省エネ・省二酸化炭素・ヒートアイランド現象の緩和に役立つ。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学都市科学・防災研究センター
特任教授 益田 晴恵(ますだ はるえ)
TEL:06-6605-3673
E-mail:harue[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs07
  • SDGs17