最新の研究成果
広島県における西日本豪雨災害時の井戸利用の促進構造が明らかに
2024年11月12日
- 現代システム科学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇2018年の西日本豪雨で、大規模断水が起きた広島県呉市での災害用井戸の利用実態を調査。
◇広島県庁、水質検査機関、呉市が、井戸水の水質検査無償化サービスを地元の井戸所有者に提供し、共助利用を促していたことが明らかに。
◇経済誘因を活用した地下水の防災利用促進は他に例がなく、他地域でのモデルになり得る。
概要
台風や地震などによる断水時に、生活用水や飲料水を確保する水資源として、災害用井戸が注目されています。しかし、災害時の混乱した状況下で井戸がどのように利用されていたかは記録が少なく、災害用井戸の普及に向けて詳細な調査が必要です。
大阪公立大学大学院現代システム科学研究科の遠藤 崇浩教授は、2018年の西日本豪雨で断水被害を受けた広島県呉市を対象に、災害時地下水利用の実態調査を行いました。その結果、広島県と水質検査機関(広島県環境保健協会)が事前協定に基づき、断水被害後に井戸水の水質検査の無償化サービスを提供し、検査を受けた井戸を近隣に開放してもらう取り組みを進めたことが分かりました。また、このような取り組みにより、短期間で数多くの井戸が利用可能となり、自治体の給水活動を補完する効果をもっていたことが明らかになりました。本事例は、水質検査の無償化という経済誘因を活用した応急給水政策であり、能登半島地震をきっかけに災害用井戸の導入を検討する他の自治体へのモデルとなる政策であると考えられます。
西日本豪雨時に地元で使われた井戸(呉市)
本研究成果は、2024年11月8日に国際学術誌「Water International」にオンライン掲載されました。
2024年元日に起きた能登半島地震をきっかけに、減災ツールとしての井戸の重要性が見直されています。断水は地震だけでなく水害時でも起きます。この論文は2018年の西日本豪雨を例に、県、水質検査機関、市、井戸保有者が連携して地域の井戸を有効活用したプロセスを明らかにしたものです。今回の論文が災害用井戸の普及に役立てば幸いです。
遠藤 崇浩教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Water International
【論文名】Adaptive governance and evolution of a groundwater-based resilient city: a case study of Kure City, Japan
【著者】Takahiro Endo
【掲載URL】https://doi.org/10.1080/02508060.2024.2423451
資金情報
本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」(研究推進法人:国立研究開発法人防災科学技術研究所)、科学研究費助成事業(基盤研究(C))(22K12498)、公益財団法人旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成発展研究「災害用井戸の研究-日本の応急給水政策の拡充に向けて-」からの助成を受けて実施しました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院現代システム科学研究科
教授 遠藤 崇浩(えんどう たかひろ)
TEL:072-254-9646
E-mail:endo[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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