最新の研究成果
牛乳由来の乳化剤と同レベル! パン酵母から乳化活性を持つタンパク質を特定
2024年11月13日
- 工学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇パン酵母から乳化活性を持つ4種類のタンパク質を発見。
◇そのうち一つは、牛乳由来の乳化剤に匹敵する乳化活性を示すことが明らかに。
◇アレルギー特定原材料ではない、天然由来の乳化剤開発に繋がることに期待。
概要
乳化剤はマーガリンやドレッシングなどの食品や化粧品に使用されており、水と油を均一に混ぜる作用があります。乳化剤の多くは化学合成されたものですが、消費者の志向としては天然由来のものが好まれます。また、現在主に使用されている天然由来の乳化剤は、牛乳や卵、大豆などアレルギー特定原材料やそれに準ずる材料から得られたものが多く、それらとは異なる材料由来の乳化剤が求められています。
大阪公立大学大学院工学研究科の東 雅之教授、尾島 由紘准教授、齋藤 大輝氏(当時 大阪市立大学大学院工学研究科 前期博士課程2年)らの研究グループはこれまで、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)の3種類の細胞壁タンパク質(Gas1、Gas3、Gas5)に高い乳化活性があることを明らかにしてきました。しかし、これらは細胞壁と強く結合して固定されているため、本研究では細胞壁から簡単に遊離するタンパク質に着目し、乳化活性を調べました。その結果、細胞質と細胞壁の両方に局在する4種類のタンパク質(Fba1、Eno1、Eno2、Tdh2)に乳化活性があることを突き止めました。また、Tdh2は牛乳由来の乳化剤(カゼイン)と同程度の乳化活性を示すことが分かりました。
本研究成果は、2024年10月19日に国際学術誌「Food Hydrocolloids」のオンライン速報版に掲載されました。
本研究では、酵母の細胞表面に存在する乳化活性を示す物質を同定し、乳化活性能の評価を行いました。同定した物質を高発現するシステムを構築し、精製まで行った経験を活かし、今後も物質生産に取り組んでいきたいと考えています。
齋藤 大輝氏
掲載誌情報
【発表雑誌】Food Hydrocolloids
【論文名】Yeast cell wall-derived proteins: Identification and characterization as food emulsifiers
【著者】Daiki Saito, Shinsuke Nerome, Manami Tachiwana, Yoshihiro Ojima, Masayuki Azuma
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.foodhyd.2024.110746
資金情報
本研究の一部は、公益財団法人エリザベス・アーノルド富士財団からの支援を受けて実施しました。
関連情報
Onishi et al., Food Hydrocolloids, 112, 106321 (2021).
https://doi.org/10.1016/j.foodhyd.2020.106321
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院工学研究科
教授 東 雅之(あずま まさゆき)
TEL:06-6605-3092
E-mail:azuma[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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