最新の研究成果
シイタケ由来の抽出物が肝線維化の進行を抑える可能性
2024年11月20日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇肝線維化※1の進行に対するシイタケ菌糸体培養抽出物AHCC®※2の作用を解析。
◇AHCC®は肝星細胞※3の活性化を抑制することで肝線維化の進行を抑えることが示唆された。
概要
肝臓に長い間炎症が続くと、コラーゲンなどの線維が蓄積する肝線維化が引き起こされます。肝炎により肝星細胞が活性化されると、肝線維化が促進し致死的な肝硬変へ進行します。しかし現時点では、肝硬変に有効な薬剤は見つかっていないため、肝線維化の進行を早期に抑制することが重要です。シイタケの菌糸体培養抽出物であるAHCC®は、肝臓の保護作用が知られているサプリメントで、そのメカニズムの解明が望まれています。
大阪公立大学大学院医学研究科機能細胞形態学の宇留島 隼人准教授、株式会社アミノアップの共同研究グループは、AHCC®の肝星細胞および肝線維化への作用についてモデルマウスを用いて解析。その結果、AHCC®が肝星細胞の活性化を抑え、肝線維化の進行を抑制していることを確認しました。また、活性化した肝星細胞を特異的に認識するマーカーの発現が減り、抗線維化タンパクとして知られているサイトグロビンの発現が増えることも分かりました。さらにヒトの肝星細胞を用いて、AHCC®がどのように肝線維化の進行を抑制するのかも解明しました。
本研究成果は、2024年9月24日に国際学術誌「American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology」のオンライン速報版に掲載されました。
肝臓は沈黙の臓器で、病態がかなり進行して初めて症状が出る場合が多いです。積極的に健康診断を受診し、肝線維化を早期発見して、生活習慣の改善に取り組むことが重要です。今後は、より信頼度の高い科学的エビデンスの構築のために、肝線維化患者に対するAHCC®の効果を確認する臨床試験実施を目指してまいります。
宇留島 隼人准教授
掲載誌情報
【発表雑誌】American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology
【論 文 名】AHCC inhibited hepatic stellate cells activation by regulation of cytoglobin induction via TLR2-SAPK/JNK pathway and collagen production via
TLR4-NF-κβ pathway
【著 者】Hayato Urushima*, Tsutomu Matsubara, Gu Qiongya, Atsuko Daikoku, Misako Takayama, Chiho Kadono, Hikaru Nakai, Yukinobu Ikeya, Hideto Yuasa, and Kazuo Ikeda (* 責任著者)
【掲載URL】https://doi.org/10.1152/ajpgi.00134.2024
用語解説
※1 肝線維化:慢性肝炎時にコラーゲンなどの線維成分が蓄積した病態のこと。進行すると肝硬変となる。肝炎ウイルス感染や、アルコール・高脂肪食の長期間にわたる大量摂取などが原因で起きる。
※2 AHCC®:株式会社アミノアップが開発したシイタケ菌糸体培養抽出物のこと。これまで免疫活性作用や、抗がん剤による副作用軽減効果などが報告されている。
※3 肝星細胞:正常な肝臓ではビタミンAを貯める働きをしているが、肝炎時には活性化してコラーゲンを分泌する。
資金情報等
本研究は、株式会社アミノアップとの共同研究により実施しました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科機能細胞形態学
准教授 宇留島 隼人(うるしま はやと)
TEL:06-6645-3701
E-mail:urushima.hayato[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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