最新の研究成果
世界初! ネコES細胞の作製に成功
2024年12月4日
- プレスリリース
- 獣医学研究科
ポイント
◇去勢・避妊手術で廃棄される精子や卵子を用いて、高品質なネコES細胞を作製。
◇未分化状態を維持したまま何代も継代でき、三胚葉への分化能力も確認。
◇ヒョウやトラなど、絶滅の恐れがある大型ネコ科動物の保全にも繋がることが期待。
概要
ES細胞は、iPS細胞と同様にさまざまな細胞に分化でき、また自然に近い状態の細胞であることが特徴です。そのため、iPS細胞の品質を向上させるためにも、ES細胞の研究は必要不可欠です。近年、猫でもiPS細胞が作製されましたが、猫のES細胞はありませんでした。
大阪公立大学大学院獣医学研究科の鳩谷 晋吾教授、吉田 拓海大学院生(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 博士課程4年)らの研究グループは、猫の去勢・避妊手術で廃棄される、精巣や卵巣から採取した精子と卵子を体外受精させて受精卵を作製。胚盤胞期胚※1から内部細胞塊を取り出し、ヒトのES細胞やiPS細胞でも用いられる培地で培養することで、未分化のまま継代でき、三胚葉への分化能力のある高品質なネコES細胞の作製に世界で初めて成功しました。本研究で開発したネコES細胞作製技術を応用することで、獣医再生医療研究に使用するだけでなく、絶滅が危惧される野生ネコ科動物の種の保全に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2024年12月2日に国際学術誌「Regenerative Therapy」のオンライン速報版に掲載されました。
先日ネコiPS細胞作製の発表をしたばかりですが、今回、長年の研究成果が実りネコES細胞の作製にも成功しました。ES細胞は、受精卵から作られる万能細胞であり、iPS細胞と比較研究することでより一層、獣医再生医療研究が促進されると考えています。今後も研究を継続し、猫ちゃんと飼い主のために研究を進めて行きたいと思います。
鳩谷 晋吾教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Regenerative Therapy
【論文名】Establishment of feline embryonic stem cells from inner cell mass of blastocyst produced in vitro
【著者】Takumi Yoshida, Masaya Tsukamoto, Kazuto Kimura, Miyuu Tanaka, Mitsuru Kuwamura, Shingo Hatoya
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.reth.2024.11.010
資金情報
本研究は、JSPS科研費(22H0525)、JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2139)、および笹川科学研究助成(2022-4070)の支援を受けて実施しました。
用語解説
※1 胚盤胞期胚…受精卵が卵割を繰り返し、成長した胚。胎盤などを作る栄養外胚葉と、生体を作る内部細胞塊という2種類の細胞から構成される。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院獣医学研究科
教授 鳩谷 晋吾(はとや しんご)
TEL:072-463-5379
E-mail:hatoya[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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