最新の研究成果
M87のジェットから強力なガンマ線フレアを検出〜EHTと多波長観測が捉えた巨大ブラックホールの活動期〜
2024年12月13日
- 理学研究科
- プレスリリース
研究成果の概要
イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)コラボレーションおよび多波長の観測グループからなる国際研究チームは、M87銀河の中心部を電波からガンマ線で一斉観測した新たな研究成果を発表しました。今回の観測は、EHTによるブラックホール初撮影から1年後の2018年に行われたものです。一斉観測の結果、M87中心部から強力なガンマ線フレアを捉えることに成功しました(図1)。本成果はM87の巨大ブラックホールが約10年ぶりの活動期を迎えたことを示すとともに、超高エネルギー電磁放射の発生メカニズム解明に手がかりを与えるものです。研究成果は欧州の天文学専門誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジクス』に掲載されました。
研究のポイント
- 巨大ブラックホール天体M87について、EHTを含む大規模な多波長一斉観測を実施
- 約10年ぶりに高エネルギーガンマ線フレアが検出され、巨大ブラックホールの活動期を捉えた
- 国内からも電波望遠鏡や光学望遠鏡が参加し、ジェットの形状変化を捉えるなど、活動期のブラックホールの謎に迫る手がかりが得られた
図1:2018年4月に様々な波長で撮影されたM87の画像およびガンマ線望遠鏡によって検出されたフレアの測定データ。クレジット:EHT Collaboration, Fermi-LAT Collaboration, H.E.S.S. Collaboration, MAGIC Collaboration, VERITAS Collaboration, EAVN Collaboration
澤田-佐藤 聡子研究員からのコメント
巨大ブラックホールは、その周囲環境に非常に大きな影響を及ぼします。ブラックホールが周囲の星間物質を飲み込む際に、その星間物質の重力エネルギーが解放されて明るく輝き、フレアを発生させます。今回観測されたフレア現象も、M87のブラックホールが周囲の物質を飲み込んだことが引き金になっていると考えられます。この現象をさらに詳しく調べるために、世界中の様々な望遠鏡を使った合同観測が継続して行われており、大阪公立大学はEAVNによる電波天文観測で本研究に参加しています。
研究助成
この研究は、文部科学省/日本学術振興会科学研究費補助金(18KK0090,18H03721,18K13594, 18K03709,19K14761,18H01245,25120007,19H01943,21H01137,21H04488,22H00157, 23K03453)、および「富岳」成果創出加速プログラム(JPMXP1020230406)、HPCI システム利⽤研究課題(課題番号:hp240054, hp240219)、その他の支援を受けて行われました。すべての支援機関については、論文謝辞をご覧ください。
掲載誌情報
【発表雑誌】Astronomy and Astrophysics
【論文名】Broadband Multi-wavelength Properties of M87 During the 2018 Event Horizon Telescope Campaign including a Very-High-Energy Gamma-ray Episode
【著者】EHT Multi-wavelength Science Working Group, EHT Collaboration, Fermi-LAT Collaboration, H.E.S.S. Collaboration, MAGIC Collaboration, VERITAS Collaboration, EAVN Collaboration
【掲載URL】https://doi.org/10.1051/0004-6361/202450497
国内の共同発表機関
名古屋市立大学、自然科学研究機構 国立天文台 水沢VLBI観測所、工学院大学、東京大学、東京科学大学、自然科学研究機構 国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト、茨城大学、大阪公立大学
研究に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 理学研究科
澤田-佐藤 聡子
E-mail:sss[at]omu.ac.jp ※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
広報課 川上
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp ※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs