最新の研究成果

~利己的な他者を罰するよりも見て見ぬふりをする人々~ 罰判断研究の新たな実験手法を開発

2024年12月10日

  • 現代システム科学研究科
  • プレスリリース

概要

利己的な行動をする他者に対して、自分の利益にならなくても労力をかけて罰を与える行為を「利他罰」と呼びます。この利他罰を与えるかを問う第三者罰ゲームの従来の実験では、参加者に他者の利己的な行動を強制的に観察させたうえで罰を与えるかを尋ねていたため、多くの参加者が利他罰を与えると示されてきました。しかし最近の研究では、他者の利己的な行動を見るかどうか選べる場合、見ないことを選択する可能性があることが示唆されていました。

大阪公立大学大学院現代システム科学研究科の三石 宏大大学院生(博士前期課程1年)、河村 悠太准教授らの研究グループは、近年の研究結果を踏まえ、現実社会に近い状況を提供する実験手法を開発。他者の利己的な行動の目撃回避は、参加者が不平等を目撃したくないという動機と、罰を与えることへの忌避の両方から生じていることが明らかになりました。また、不平等な場面の目撃を避ける傾向にある参加者でも、それを目撃せざるを得なかった場合には罰を与えることが示されました。さらに、間接的に罰を与える選択肢が与えられた場合、参加者が不平等な場面の観察を回避する可能性は低くなることも明らかになりました。これらの結果より、従来の第三者罰ゲームで高頻度に観察される直接的な罰は、参加者が不平等な分配を目撃することを回避できないというゲーム構造に起因している可能性を示唆しました。

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本研究成果は、2024年11月2日に国際学術誌「Journal of Experimental Social Psychology」にオンライン公開されました。

過去の研究で存在が示されてきた利他罰について、批判的な視点で研究を行いました。人々が利他罰を行わなければならない状況を回避することを示しただけでなく、その動機についてまで検討できたのは面白かったです。

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三石 宏大大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Experimental Social Psychology
【論 文 名】Avoidance of altruistic punishment: Testing with a situation-selective third-party punishment game
【著  者】Kodai Mitsuishi, Yuta Kawamura
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.jesp.2024.104695

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院現代システム科学研究科
准教授:河村 悠太(かわむら ゆうた)
E-mail:ykawamura[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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