最新の研究成果
食道症状への心理的影響を調べる質問票の日本語版を開発 -症状改善に向け、より適切な治療の選択へ-
2024年12月20日
- 医学研究科
- プレスリリース
概要
胸やけやつかえ感などの食道症状は、胃酸逆流や食道の動きなどの客観的評価より、症状が起こるかもしれないという不安や高警戒※1など、心理的要因が症状の強さに影響するといわれています。しかし一般的な心理状態を評価する質問票はあるものの、食道症状に特化したものはありませんでした。米国では2018年に、食道症状への不安や高警戒を評価する質問票「Esophageal Hypervigilance and Anxiety Scale(EHAS※2)」が開発されましたが、日本語版の開発や信頼性・妥当性の検討は行われておらず、日本では十分に使用できない状態でした。
大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学の沢田 明也病院講師、藤原 靖弘教授らの研究グループは、EHASの開発者らの協力のもと、EHAS日本語版を開発。国内6施設で食道内圧検査を受けた患者432人による、EHAS日本語版や食道症状に関する質問票への回答結果を検討し、EHAS日本語版の信頼性と妥当性が示されました。また、わずらわしい食道症状の原因となる食道アカラシア※3や、類似疾患を持つ患者113人に対して、EHASへの回答結果と症状の強さの相関を検証しました。その結果、EHASスコアが高い患者ほど、症状を強く感じていることが分かりました。EHASを用いて、心理的要因の影響が大きい食道症状をより正確に判断することで、適切な治療の提供につながることが期待されます。
本研究成果は、2024年12月9日に国際学術誌「Journal of Gastroenterology」のオンライン速報版に掲載されました。
掲載誌情報
【発表雑誌】Journal of Gastroenterology
【論文名】Validation of the Japanese version of the Esophageal Hypervigilance and Anxiety Scale for Esophageal Symptoms
【著者】Akinari Sawada, Yoshimasa Hoshikawa, Hiroko Hosaka, Masahiro Saito, Hirotaka Tsuru, Shunsuke Kato, Eikichi Ihara, Tomoyuki Koike, Toshio Uraoka, Kunio Kasugai, Katsuhiko Iwakiri, Daniel Sifrim, John Erik Pandolfino, Tiffany H. Taft, Yasuhiro Fujiwara & Japan EHAS Study Group
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s00535-024-02193-w
用語解説
※1 高警戒…恐怖心によって感覚への注意や警戒が高まった状態。
※2 EHAS…食道症状に対する思いに関する15問からなる質問票で、各質問に対して「全くそう思わない(0点)」から「強くそう思う(4点)」の5段階で評価する。満点は60点となり、質問1~9の合計が不安、10~15の合計が高警戒のサブスコアとなる。
※3 食道アカラシア…食道と胃の境に存在する下部食道括約筋という筋肉の弛緩不全と、正常食道蠕動の欠如によって、食物がスムーズに食道から胃へ流れない良性疾患。つかえ感や胸痛、逆流感といった症状を引き起こす。
参考資料
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
病院講師 沢田 明也(さわだ あきなり)
TEL:06-6645-3811
E-mail:a.sawada[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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