最新の研究成果

エジプト産の乳製品から分離した大腸菌と、日本で1,800人以上の食中毒患者を出した菌の性状が一致

2024年12月20日

  • 獣医学研究科
  • プレスリリース

概要

エジプトでは衛生環境が良くない地域も多く、乳製品による集団食中毒が頻繁に発生しています。そのため、治療法の確立や感染源・感染経路の解明に向けて、どのような菌が存在するのかを調べる必要があります。

大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センターの山﨑 伸二教授らの研究グループは、エジプトで生産された水牛やヤギのミルク、チーズ、ヨーグルトなどから病原性のある大腸菌を分離し、その性状を調べました。その結果、分離された大腸菌のうち一つは、2021年に富山県で1,800人以上の食中毒患者を出した大腸菌と性状が一致することが分かりました。またこの菌は、3型分泌装置と呼ばれる細菌の病原性維持、維持削除に関わる病原遺伝子を持っており、多くの抗生剤に対する耐性があること、抗菌薬に対する耐性がある菌が存在していることも明らかになりました。本研究で発見した大腸菌は、既存の範疇に入らない新規の病原性大腸菌になる可能性があると注目を集めています。今後、さらなる性状の解明が進むことで、有効的な治療法や予防法の確立につながることが期待されます。

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本研究成果は、2024年12月4日に国際学術誌「International Dairy Journal」のオンライン速報版に掲載されました。

食の安全は世界の人々求めている課題ですが、エジプトでは衛生状態が先進国とは異なりまだまだ不十分です。今回エジプトの乳製品から日本で大規模集団食中毒事件の原因菌と同じ新規の病原性大腸菌が見つかり、正直驚いています。本菌の簡便な検出法を開発し、帰国後はエジプトや近隣諸国での本菌の分布を調査する予定です。

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(左)Asmaa M. Elbastawesy大学院生
(右)山﨑 伸二教授

掲載誌情報

【発表雑誌】International Dairy Journal
【論文名】Prevalence of potentially pathogenic and antimicrobial-resistant Escherichia coli in raw milk and dairy products in Egypt
【著者】Asmaa M. Elbastawesy, Sharda Prasad Awasthi, Noritoshi Hatanaka, Atsushi Hinenoya, Atsushi Iguchi, Rabee A. Ombarak, Azza M.M. Deeb, Shinji Yamasaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.idairyj.2024.106145

資金情報

本研究は、エジプト・日本教育パートナーシップ(Egypt-Japan Education Partnership)、文部科学省 奨学金(Ministry of Science, Culture and Sports of Japan)、大阪府立大学・大阪公立大学基盤研究費からの支援を受けて実施しました。

用語解説

※ 3型分泌装置…タンパク質分泌装置の1つ。菌体表面から突出した針様の構造体で、細菌内で作られたタンパク質を宿主細胞内に打ち込むことで病原性を発揮する。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センター
教授 山﨑 伸二(やまさき しんじ)
TEL:072-463-5653
E-mail:yshinji[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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